華やかだと言われれば誰もが頷くだろう。
着飾らなくとも街を歩けば誰もが振り返るだろう。
その佇まいから綺麗な薔薇が似合いそうな彼女はいつも可憐な微笑みを振りまいて仕事に励む。
彼女見たさに店の常連客になる男も少なくはないだろう。
そして気付けば財布が軽くなっている事に気付く男も少なくはないだろう。
まったく、単純な野郎達だ
まぁそんな俺も例外に漏れてなかったけど。

…あ。見て分かる通り過去形だからね?
だって今ではプライベートでも会える仲だし?寝る前には電話しちゃう感じだし?
…なんでかって?
それは──


01


「山崎さん!」


俺を見るなりにこやかに笑って駆け寄るのは凜ちゃん。冒頭で述べた通りいつも華やかな凜ちゃんは今日も可愛い。


「凜ちゃん」

俺も駆け寄って笑う

「久々に会えましたね!」
「本当。中々時間作れなくてごめんね?」
「とんでもないです、本当は今だって忙しいのに…ありがとうございます」
「何言ってるの、忙しいのは凜ちゃんもでしょ?」
「ふふ、山崎さんに会えるのが嬉しくて…昨日はあまり眠れませんでした」


ほっといじらしく顔を赤らめる凜ちゃん。

あああああなんでこんなに可愛いのォォォォォ?!
と、発狂寸前になるくらい彼女は可愛い。
外見も。中身も。そして1番はギャップ。

派手な外見を好むのに中身は清純。
ちょっとした事ですぐ照れちゃうし、たまに話してるだけで顔が赤くなっている。
男の1人や2人くらい遊んでいそうな感じにも見えなくはないのに、節操もちゃんとわきまえていてるから意外性に富んでいる。

その華やかな外見に誘われて言い寄る男も沢山いるに違いない。
だから守ってあげる。
何ヵ月か前に勢いで告白紛いな事を言ったらありがとう、と嬉しそうに微笑んでいたのを昨日の事のように覚えている。
思い出す度にクサイ台詞に照れてしまう。でもそれ以上にニヤけてしまうのはもう病気以外の何でもない

…と言うわけでご察し頂けた通り俺と凜ちゃんは付き合ってます。

お店の看板娘の、凜ちゃんと。
高嶺の花の存在の、凜ちゃんと。


いやー、奇跡ってあるんですね


でも困った事が1つ

それはみんなから彼女を奪ってブーイングを受けた事でもなく。
たまに見知らぬ男が通り過ぎ様に「早く別れろ」と言われる事でもなく。

凜ちゃんが華やかすぎて地味な俺がさらに霞んでくって事が1番の難点。


例えば凜ちゃんの働いてる店の店主。

「やあ、凜ちゃん」
「こんにちは」
「何してるの?」
「今からお出かけです」
「…お出かけ?1人で?…はぁ、せっかくの休みなんだから1人で歩いてないで早くイイ人見つけなさい。」

店主はケラケラ笑う
いや、1人、って。
俺一応隣にいるからね。

「今日は久々に彼も一緒なんです」
「ど、どうも」
「ああ、山崎君。いたの」

冷めた目で俺を見る
いや、いたの、って。
明らかにわざとだよね。
アンタもあれか、凜ちゃんを取られたのが気に食わない奴の1人か、そうなのか

「じゃあ邪魔者は退散するよ。また明日」
「おつかれさまです」
「おつかれさまでー…す」

いやいや。
怖いんですけど
睨みきかせながら去って行きましたけど。
いつか俺を殺り兼ねない目だったのは気のせいじゃないハズ

背筋がぞっとした


「…ごめんなさい」


すっかりトーンが下がっている声の主を見ると申し訳なさそうに頭を垂れている。
…不謹慎だけど可愛いとか思っちゃったよォォォォォ!

本日二度目の発狂寸前

咳払いをして気持ちを立て直す

「いや全然、慣れっこだから大丈夫だよ」


だって

凜ちゃんはさながらお店に売られている高級な花、俺はいつ踏みつけられてもおかしくないそこら辺の道端に生えてる雑草

そんな奇跡的な組み合わせを見せつけられたら僻まれるのも仕方ないっちゃ仕方ないけど、


「ほら、そんな暗い顔しないの!久々に会ったんだから沢山笑おう?」
「…はい」
「よし。偉い偉い」
「へへ」
「じゃ、そろそろどこか行こうか。行きたい場所ある?」
「そうだなぁ…山崎さんの部屋に行きたいです」
「OK!…って、えぇぇぇぇ!?」
「ふふふ、嘘です」


でも俺は知ってるよ。

ぱっと見、夜がよく似合う薔薇の様に綺麗な凜ちゃん。

本当は、太陽がよく似合うガーベラの様な女の子なんだって事。

勘違いして言い寄って来る男から俺が守ってあげる。


だから今日も安心して隣を歩いていいよ。












やっちゃいました、連載夢。連載を書くのは初めてなので色々至らない部分があるかと思われますがよろしくお願いします^^*

20100521

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