行き場のないやりきれない思いがぐるぐる回って

さっきの事が頭から離れない

守ってあげられなかった
無力なんてものじゃない、あれは見捨てにも似た行為

後悔がせめる
本当に行き場がないのは、俺自身


08


「…」


あの後どこへ行くでもなく屯所に戻ればタイミング良く凜ちゃんからメールが入った。

『おつかれさまです。仕事の調子はどう?
間に合いそうになかったらまた今度行こう。
…ほんの少しでも時間空いたら連絡ください』

彼女のメールにはそう記されていて
溜め息を吐いた。
きっとやりきれないのは凜ちゃんもまた然り。

30分後ようやくメールを作る気力が出て携帯を握りしめる

『今から会えるならあの場所で待ってる』

短文のメールを送信した後また屯所を出る。


気分が上がったり下がったり

場所を行ったり来たり


俺はなんて忙しい奴なんだ













「…退くん」

二人だけのあの場所へ行くと先に着いていたらしく力なくそこに座っていた。

凜ちゃんの表情はどこか浮かない

「凜、ちゃん」
「お店来なかったから…、仕事忙しそうなのに余計な気を使わせてごめんね」
「…」
「…でも一目でいいから会いたくて…わがまま言ってごめんなさい」
「…」
「……。…何かあったの?」
「何かあったのは凜ちゃんの方でしょ?」
「え?」
「やっぱり、綺麗な花に雑草は不必要だよ」
「?意味が分からない、…」
「昼間の…見たんだ」
「、!あれは、」
「助けていいの分からなくて何も出来なかった」
「…」
「怖かったと思う。けど俺は自分が思っていたよりも弱くて…踏み出せなかった」
「大丈夫……、怖くなんてなかった、だから退くんが気にすることなんて何もないよ」
「無理しないで。…、守れなくて本当にごめん」
「…、…いいの、私、退くんがいれば何も怖くない」
「でもおかげでやっと分かったんだ」
「?」
「凜ちゃんみたいな華やかな子には同じ様に華やかな男が似合うって事に、今さら。…凜ちゃんを守るなんて俺は役不足。ごめんね。」

凜ちゃんの表情が泣きそうな顔に変わる。
でも今この手は宥める事も出来そうにない。
どこまで無力なんだ

「…分かんないよ…みんなそればっかり…、」

「綺麗な花だとか、雑草だとか、華やかさとか、関係ない。
目に見えるものに惹かれたんじゃない。

私、そんなもので退くんを好きになったわけじゃないのに」
「凜ちゃ、」
「それとも退くんは私の目に見える所が好きなの?
私の嫌いな所が好きって言ってくれたのは…守ってあげるって言ってくれたのは……嘘だったの?」
「、」

「……もういい。付き合わせちゃってごめんなさい」


この時凜ちゃんは泣いていたんだと思う。確信できないのは俺が彼女の顔を見る事すら出来なかったから。
顔を上げた時にはもう凜ちゃんはいなかった。


凜ちゃんを知り尽くしている、なんて
ただの勘違いだった
俺は彼女の強い思いを何一つとして分かっていなかった

頬に雫が零れる
涙なんかじゃない、雨

ぽつり ぽつり

静寂を破る様に雨が降りしきる
俺はそのまま動けない
喪失感とまごつく感情でぐちゃぐちゃだ

…凜ちゃん、は、無事に家に帰れただろうか。
雨に濡れなかっただろうか。

あぁ、駄目だ
凜ちゃんの事しか考えられないなんて

やっぱり俺には凜ちゃんが必要で

今さら自分の愚かさに気付く

「…凜ちゃん、…」

名前を呼んでも激しい雨にさらわれて消えていってしまった


天気予報は確かに晴れだったのに

いつまでも雨が、降り続いた
















更新が遅れた上にまたもや長くてごめんなさい。次回で終わりです。

20100821

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