ドフラミンゴ×





私が欲しいもの。


ひとつ、キラキラの甘いお菓子。
ふたつ、お姫様みたいな可愛い服。
みっつ、全てを捩伏せる力。


そして――



そこが世界の墓場だった



街中に耳をつんざくような悲鳴が響き渡る。目の前で真っ赤な液体が舞い散るのを眺めながら、私は添えられていた苺をひとつ口に運んだ。途端に広がる甘酸っぱい香り。ほんのりと赤く染まる指先を口に含む。


「フン、つまらない男…」


べしゃりと私の足元に力無く崩れ落ちた体。その拍子にそいつの血が数滴、履いていた靴に跳ねた。ピンクの可愛い、彼に買ってもらったお気に入りのヒール。


「…汚れちゃったじゃない」


能無しの役立たず。私はお菓子のたくさん乗った皿を膝の上に乗せたまま、傍に転がるそいつの顔をぐっと思い切り踏み付けた。ヒールの先で男の顔が歪み、また新たに血がヒールを染め上げる。あぁ、彼のシンボルを穢した上に私の靴まで汚すなんて本当に図々しい奴。



「フフフッ!そのくらいにしといてやれよマリア…」



ピンクだったヒールが真っ赤に塗り替えられた頃。未だ止めない私を制止する声が聞こえた。


「ドフラミンゴ…」
「悪いお姫様だな、たかが靴だ」
「たかが靴じゃないわ。だってあなたに買って貰ったんだもの」
「フフ、嬉しい事言うじゃねえか」


後ろから伸びてきた腕に強く抱き寄せられる。刹那、顎を掴まれたかと思うと唇を重ねられた。サングラスに隠れて見えない、獰猛な輝きを映した瞳。それに見つめられていると思うだけで、もうあなたしか見えない。足蹴にしていた男の存在なんか忘れて、少し高い所にある彼の首に私は腕を回す。


「んっ、はぁ…ドフラミンゴ」
「靴ならまた新しいやつを買ってやる。マリアの望む物は何でも与えてやろう。だが俺以外の奴で汚されるのは許さねえ」


この服も、ヒールも、身に纏う宝石も。全て私が望んで彼が私に買い与えた物。彼は履いていたヒールを脱がして放り投げると、そのまま私の体をひょいと抱き上げた。


「…次は紫が良いわ」
「上等じゃねえか。ならそれに合う服も新しく買わねえとなァ?」


ふわふわのピンクに包まれて。ふと何気なしに後ろに目を遣れば睨み付けるような瞳とかちあう。

(何て無力で愚かな人たち…)

力の無い者は淘汰され、やがて消えて行く運め。それは変えようも無い世の理だ。そんな弱い人間についた結果負けたお前達は、彼では無く判断を誤った自らを恥じて憎むべきだと言うのに。あぁ、私は何て幸せな人間なのだろう。女の子とは本来綺麗に飾って守られるべきもの。ましてや海賊など野蛮の一言だ。


「…ねぇ、ドフラミンゴ」
「どうしたマリア?」
「私、可愛い服を着ていたいの。可愛い私に、可愛い物。部屋はもちろん可愛い人形でいっぱいよ。朝は甘いハニートーストを食べて昼はメープルたっぷりのパンケーキ、夜はフルーツとクリームをいっぱい使ったケーキに寝る前は温かいホットミルクを飲む。そしてあなたに包まれてまた朝を迎えるの。どう、素敵だと思わない?」
「フッフッフッ、最高だな。マリアがそう望むなら叶えてやるぜ?」


ふわふわに波打つハニーブロンドの髪を掻き上げて、ドフラミンゴは私の耳朶を甘く唇で喰む。あぁ、また離れられない。彼の前では私などちっぽけな存在であり、いとも簡単に酔わされて彼という獣に食い尽くされるのだ。



「フフフッ!さぁ、次は何をご所望なんだ?お姫様はよォ…」



私の世界など。彼と出会ったあの日から死んでしまっている。



―――――
初めてのドフラミンゴ夢。
海賊では最近彼がお気に入りです。
てか夢主が軽く頭がトンでる…。
(title:たとえば僕が)

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