ニール×
「"燈籠流し"って知ってる?」
部屋に入るなり、俺はそう言われた。
慣れた手つきでコーヒーを2人分入れる。
一方は俺、もう一方は彼女に渡した。
「ありがとう」
「いや。で、何なんだよ"燈籠流し"って」
ベッドに腰掛ける彼女の隣に座って、まずはコーヒーを一口。
今日はブラックの気分だ。
甘党の彼女には砂糖とミルクをたっぷり。
香ばしい香りが部屋中に充満する。
「"燈籠流し"って言うのは日本の伝統行事よ。木枠と紙でできた籠に蝋燭を入れて川に流すんだって」
「へー、よく知ってるなルシア」
「ふふ、刹那に聞いた」
なるほどと俺は同意を込めて笑った。
日本に潜伏中にたまたま知ったんだろう。
あれでなかなか熱心な奴だからな。
俺は更にもう一口、コーヒーを啜る。
「そうだ、今から作ろっか」
「おいおい、いきなりだな…」
そう言いつつ立ち上がる俺。
言ってる事とやってる事が反対だ。
2人分のカップをサイドボードに置く。
材料集めはすぐに終わった。
備え付けの椅子に2人で座って作業する。
あーだこーだ言いながら、少しずつそれは形を作っていった。
30分もあれば燈籠は完成。
ちょっと不格好だが、まあ上出来だ。
次にルシアは表面の紙に絵を入れていく。
俺はその様子を黙って横から見つめた。
「ねぇロックオン」
ふと、ルシアが俺の名前を呼ぶ。
「なんだ?」
「どうして燈籠流しすると思う?」
「どうしてって…」
そんなの知ってる訳がない。
俺はあれこれ考えて黙り込んだ。
こんなものに意味などあるのだろうか。
そんな俺を他所に、ルシアは話を続ける。
「送り火」
「は?」
「死んだ人の魂を送る為なんだって」
―できた
ルシアはペンを置いて燈籠を見た。
それは室内灯の光を浴び、柔らかく光る。
「今度地球に降りたら流そうね」
サイドボードからカップを取って飲んだ。
ちょっと放置していたせいか、それは冷えていて妙に苦く感じる。
何で今日に限ってブラックにしたのか。
俺はルシアを抱きしめて少し後悔した。
傷痕を確かめながら
(いつの間にか深く傷付いていた君、)
一体いくつ流したら、
俺たちが奪った魂たちを送れると言うの。
―――――
ロックオン夢でした。
今回はちょっと切ない目に。
…いや、いつも切ない気がする?
燈籠流ししたことないです。
彼らとかほんと何個作れるんだ。
きっと人手が足りないだろうな。
でもそれだけ命を奪ってるんだよね…。
そう思うと悲しすぎる。
*灰色ロマンチスタ
(2009/1/24)
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