会議が終わって、これから昼食に向かうという元帥や大将達と一緒に食堂へ行く。将校専用の食堂はもちろん一般の海兵達はおらず、忙しいのか他の将校たちも居なかった。席に着くと少ししてから、ランチの皿が運ばれてくる。


「まだガープに訓練してもらっているらしいが、少しはあの馬鹿に鍛えられて強くなったのか?」
「あ、いえ…まだ全然駄目で…」


突然のセンゴク元帥の言葉に手にしていたスプーンが止まり、何だか申し訳なくて俯いた。


「フン、根性が足りんのじゃァ」
「まあまあ。始めた頃なんかたった五分しか走れなかったんだよ?今は半分以上こなせるんだから、まだマシな方じゃないの」
「サカズキは少し厳しいよォ」


刺を含んだようなサカズキさんの言葉を、クザンさんとボルサリーノさんが窘める。ちらりとサカズキさんと目があったけど、すぐに不機嫌そうに逸らされてしまった。

(やっぱり私、嫌われてる…)

正直この場所にご一緒するのだって恐れ多いのに。



「…私、やっぱり失礼します」



食事中に席を立つなんて本当は失礼だけど、気まずくて部屋を出る。私のせいでみんなの雰囲気が悪くなっているのは明らかだった。外に出て空いてたベンチに腰掛ける。


「あ、やだ…っ」


一人になったせいか、ぽろぽろと涙が出てきた。少し離れた所では海兵さんが休憩しているし、慌ててゴシゴシと涙を拭う。だけど全然止まってくれなくて、何をしてるんだろうと余計に涙が込み上げてきた。


「あらららら、大丈夫?」
「っ、クザンさん…」
「そんなに泣いちゃってさ」


そう言って綺麗に折り畳まれたハンカチを手渡される。


「すいませんでした」
「え、何が?」
「いつも迷惑をおかけして」
「あー、別に良いって」


隣に腰掛けるクザンさんは、いつもの調子で言った。私を気遣ってからか、極力こちらを見ないようにしてくれている。そんなさりげない大将の優しさがまた辛かった。


「サカズキはさ、元々あんな気難しい奴だから。さっきみたいなのは日常茶飯事というか…。あー何だ?とにかくあんま気にすんなや」


アリエルが頑張ってるのは俺が知ってるから、と頭を撫でられる。


「で、でも…」
「アリエルはアリエルのペースで頑張れば良いんじゃねえの?」
「…っ、クザンさん」


いつもそうだ。私が一人で落ち込んでいる時は、それを掻き消すような言葉をクザンさんはくれる。まるで魔法みたいなそれが嬉しくて、私はまた涙がこぼれた。


「クザンさん…」
「ん?」
「ありがとうございます」
「………ん」


あなたの言葉に、私は救われる。


君に優しい風になる


「優しいんですね、クザンさん」
「俺は女の子には優しいよ」


ちくり。クザンさんのその言葉に何故か今度は胸が痛んだ。


(title:たとえば僕が)

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