「も、もう駄目です…」
ぱたり。そう言ってアリエルは地面へと倒れてしまった。即座に周囲に居た海兵たちが、少し離れた向こうの木陰へと彼女を運んで行く。それはいよいよ日差しの強くなってきた真夏の事だ。
「ぶわっはっはっはっ、相変わらず鍛え方が足りんわいアリエル!」
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます…」
用意してあった水を注ぎ、コップを渡す海兵。顔色の悪いアリエルがそれを少しずつ口に含むなか、ガープのじいさんは大声で笑っている。
「あんたとは違うんだから」
「んなもん、しっかり鍛えればどうとでもなるわ青二才」
「…その呼び方止めなさいって」
「すいませんクザンさん」
彼女がガープ中将の部下の訓練に混じるようになったのは、ここで暮らすようになって二年目のこと。名目上は一応海兵として扱われているのだから、同じ訓練を受けるべきというのがアリエルの言い分だった。しかし現状は三年経ってもこんな調子が続いている。
(逆にある意味凄いって…)
お陰で彼女を介抱する海兵達も、今ではすっかり慣れた手つきだ。
「あんまり気にするな」
「…はい」
しゅんと。動物に例えるならまさに耳が垂れ下がっているであろうアリエルの頭を軽く撫でてやる。
「あ!」
「どうしたのアリエル?」
「もうすぐ会議が…」
「あららら、そりゃ面倒臭い」
腕に着けた時計で時間を確認するなり、オロオロと慌てる彼女。個人的には是非サボりたいのだけれど、そうするとアリエルが元帥たちから怒られてしまうのだ。
「…仕方ねえな、ほら」
「へ?」
「会議。時間無いんでしょ?」
「あ、はい!」
俺の言葉にアリエルは急いで荷物をまとめる。
「ありがとうございました」
「なに、安いもんじゃ」
「…早く行くよアリエル」
「はーい!」
陸を泳ぐ人魚姫
「ちょっと走って下さいよ!」
「えー、アリエル押して」
「クザンさん大きいから無理です」
と言いつつ何とか少しでも早くと俺を後ろからグイグイ押す。でも細すぎるアリエルの腕じゃ、全然意味が無いんだけれども。
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