会議が終わって、これから昼食に向かうという元帥や大将達と一緒に食堂へ行く。将校専用の食堂はもちろん一般の海兵達はおらず、また昼食の時間はとうに過ぎているため他の将校たちも居なかった。カチャカチャと、食器の音だけが室内を満たす。


「まだガープの訓練に参加しておるらしいが、少しはあの馬鹿に鍛えられてマシになったのか?」
「あ、いえ…まだ全然駄目で」


突然のセンゴク元帥の言葉に手にしていたスプーンが止まる。何だか申し訳なくて声は小さくなり俯く。


「フン、根性が足りんのじゃァ」
「まあまあ。始めた頃なんかたった5分しか走れなかったんだよ?今は半分以上こなせるんだから、随分マシになったんじゃないの」
「サカズキは少し厳しいよォ」


刺を含んだようなサカズキさんの言葉を、クザンさんとボルサリーノさんが窘める。不意にちらりとサカズキさんと目があったけど、すぐに不機嫌そうに逸らされてしまった。

(やっぱり私、嫌われてる…)

これは5年前から全く変わらない。



「…私、やっぱり失礼します」



食事中に席を立つなんて本当は失礼だけど、気まずくて部屋を出る。私のせいであの部屋の雰囲気が悪くなっているのは明らかだった。空いてたベンチに腰掛ける。


「あ、やだ…っ」


一人になったせいか、ぽろぽろと涙が出てきた。少し離れた所では他の海兵さんが休憩しているし、慌ててゴシゴシと涙を拭う。けれど止まる気配は無く、て何をしてるんだろうと余計に涙が込み上げてきた。情けない。


「あららら、大丈夫?」
「っ、クザンさん」
「そんなに泣いちゃってさ」


そう言って綺麗に折り畳まれたハンカチを手渡される。


「すいませんでした」
「え、何が?」
「いつも迷惑をおかけして」
「あー、別に良いって」


隣に腰掛けるクザンさんはいつもの調子で言った。極力こちらを見ないようにしてくれている、それは私への気遣いだろう。そう言ったさりげない大将の優しさが余計に辛かった。


「サカズキはさ、元々あんな気難しい奴だから。さっきみたいなのは日常茶飯事というか…あー何だ?とにかくあんま気にすんなや」


アリエルが頑張っているのは俺が知ってるからさ、と頭を撫でられる。


「で、でも…」
「アリエルはアリエルのペースで頑張れば良いんじゃねえの?」
「クザンさ…っ!」


いつもそうだ。私が一人で落ち込んでる時は、それを掻き消すような言葉をクザンさんはくれる。まるで魔法みたい。…また、涙がこぼれた。


「クザンさん…」
「ん?」
「ありがとうございます」
「………ん」


そう、貴方の言葉に私は救われる。


君に優しい風になる


「優しいんですね、クザンさん」
「俺は女の子には優しいよ」


ちくり。クザンさんのその言葉に何故か今度は胸が痛んだ。


(title:たとえば僕が)

戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -