「おめでとうございます」
校長室で仮免許を受け取って外に出ると、フロントのお姉さんがにこりと笑ってそう言った。私は仮免許が挟まれている教習生ノートを握り締めお礼を言う。今日からいよいよ第二段階、路上教習だった。
「今日から路上だね、name」
「あー、緊張するよ…」
フロントのすぐ横、窓際の席に居るクリスティナの向かいに座る。まだ昼過ぎ、夏の太陽が空高く昇った頃の事だった。
「もう最悪…」
「name大袈裟すぎ」
「クリスはアレルヤ先生だからそんな事が言えるのよ!私なんか…」
ぐしゃり、予約予定表を握り潰してテーブルに顔を伏せる。
「ロックオン先生、話しやすくて結構良かったんだけどなぁ」
「じゃあ代わって!」
「それとこれとは話が別なの!」
ほら予鈴が鳴ったよ、と私の腕を掴んで引っ張るクリスティナ。第二段階に入るという事で新たに予定が組まれたはずが、見事にあいつの名前ばかりがずらりと並んでいた。今日の教習も当たり前のようにそうな訳で。
「…よろしくお願いします」
いつものように怠そうに歩いて来たロックオン先生に、いつものように教習原簿と配車券と教習生ノートを渡す。
「仮免合格したんだな」
「絶対に落ちたと思ってました」
「何でだよ、別に検定中止にならなかったんだろ?ならだいたいは大丈夫だぜ。…にしても今日は暑いな」
持って来ていたタオルで、額を伝う汗を拭った。こんな暑い日に長袖のワイシャツなんか着てるからだろう。どう考えてもその暑さと汗の原因は服装に違い無かった。
「よし、それじゃ車の出発前点検の仕方を説明するぞ」
路上に出る前にランプやエンジンルームなどの説明を受け、仮免練習中と書かれたプレートを付けてようやく車内に入る。エンジンを回すとロックオン先生がクーラーで涼んでいた。
「…何で長袖なんですか?」
「暑がりで寒がりだからな、俺」
良いから路上に出るぞ、と促す先生がシートベルトを着けたのを見てから教習所を出る。
リスタート3秒前
「さぁ、今日から路上だけど。取り敢えず市内を適当に行こうか」
「あ、はい」
「first nameさんは市内は全然知らないんだろ?なら卒検までに少しずつコース覚えていこうな」
取り敢えずこの先、真っ直ぐなと先生は伸びる道路を指差した。
戻る