What is your wish?
I want to restart with her._




気が付けば煙草の灰はフィルターの目の前にまで迫っていた。俺は仕方なく灰皿で吸い殻を揉み消し、今日で七本目となるそれにライターで火を点ける。どうやら短時間で吸い過ぎたせいか、それが最後の一本だったらしい。俺は空の包装紙を握り潰して投げ捨てた。


「……俺は悪くねえ」


すでに太陽は地平線に沈み、薄暗くなった部屋でベッドに寝転がる。



「ライルの馬鹿、もう知らない!」



それはほんの数時間前の事。恋人のアンジェラが、この家を出て行ったのだ。原因は俺の浮気。今晩のための買い物に出ていて、その途中で声をかけてきた見知らぬ女性。もちろん最初は断ったけれど、少しだけならという条件で結局二人でカフェに入った。…そこで調子に乗ったのがマズかったらしい。


「…どういう事よライル?」
「アンジェラ?!これはだな…」
「言い訳なんか聞きたくない」



左の頬が今もヒリヒリと痛む。最低という言葉とともに浴びせられたのは、酷く良い音をカフェに響かせた平手打ちだった。どれだけ謝っても彼女は許してくれない。



「っ、あぁそうかよ!」



そして俺は言ってしまった。絶対に俺から口にしてはいけなかった、別離の言葉を。そうして今、俺はこの家に一人で居る。どうやって聞き付けたのかは不明だが、兄さんから説経の電話までかかってきた。

(みんなして俺を怒りやがって!)

アンジェラだって俺の性格を分かっていたはずだろうに。


「………って」


そんな時、枕元に投げ捨てていた端末が鳴り響く。兄さんが何度か電話してきたが、それが面倒臭くて放置してた。でも何だかよく分からないが、これには出なければいけない気がして電話に出る。


「……もしもし?」
『…………』
「おい、悪戯なら切るぞ」
『っ、ライ…ル…?』


どきりと、心臓が強く脈打った。


「アンジェラ、か…?」
『ふっ、うぇ…ライル…っ』
「お前泣いてんのか?!」


俺を呼ぶ声に時折鳴咽が混じって聞こえる。外を見ればすっかり暗くなっていて、俺は咄嗟にしまったと内心自分に舌打ちした。取り敢えず今居る場所を聞き、取る物も取らずに家を飛び出す。


「俺の馬鹿野郎…!」


何でアンジェラを一人にした。あいつには俺しか居ないのに!

(俺は本当に大馬鹿野郎だ…)

考えてみれば今まで俺を支えてきてくれたのはいつも彼女。仕事で苛立って八つ当たりした時も、文句ひとつ言わずに見守ってくれて。一緒に居る事が増えて大切な事を忘れていたのかもしれない。


「ライルって本当にニールさんと似てないよね。でもそんなライルが良いよ」


アンジェラを好きになったのは、俺と兄さんを比べずに別々の個性を持つ人間として見てくれたから。兄さんと違って問題ばかり起こす俺の事を、ありのまま全て受け止めてくれたから。だから彼女を愛した。


「アンジェラ、愛してる。俺が一生守っていくから、傍に居てくれ」


光と音と、たくさんの人で溢れる街を駆け抜ける。一歩を踏み出す度に初めての頃の気持ちが徐々に蘇っていった。急げ、もっと、もっと、早く!あいつを抱き締めたい。



「アンジェラ…!」



澄み渡った星空の下。俺は確かに彼女の姿を見つけた。


レトロスターの降った夜


「ライ、ル…?」
「その…アンジェラ、俺は…」


我が儘かもしれない。けれど一番大切な事に今更だけど気付いた、情けない俺と一緒にどうかもう一度だけやり直してくれませんか。



Did the wish come true?_




―――――
ライル夢でした。雰囲気だけクリスマスと思って頂ければ…。ライルってどこか子供っぽい面があると思うので、あまり怒りすぎると逆ギレする気がします←あとはいわゆるプレイボーイ気質な所をネタに。基本的には彼はモテると思うのです。夢主は幼い頃に両親に先立たれた幼なじみ設定。ここじゃなくて小説内で書けよって感じですね!

イメージソングは清水翔太の「君が好き」です。歌詞がまさに今回のライルを表しています。この後二人がどうなったかは想像に任せます。

:)Thanks!!
title:たとえば僕が
image:君が好き/清水翔太



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