「となり、良いかの?」


昼食のメロンパンをかじろうと口を開くと、頭上からいきなりそんな声が聞こえてきた。ナフキン代わりにしていた支給されたばかりで真新しい青のスカーフにパンを置く。逆光で顔はよく見えないが、その人は確かに知っている人間だった。


「ぶわっはっは、何じゃまたそんな変なモンを食っとるんか?」
「別に…」


ガープ中将。白髪の老兵で変人、だけどあのゴールド・ロジャーとこのグランドラインで互角に渡り合っていた海軍の生ける伝説。


「普通に食堂で食え!」
「やだ、無理」
「みんなで食べた方が、メシは美味いもんじゃぞ…?」
「その理論が意味不明だけど」


馬鹿馬鹿しい。あんな所でみんなでご飯、なんて気持ち悪くて反吐が出る。私はパンを一口かじった。


「まったくマリアは素直じゃないのう…。あ、煎餅食うか?」
「いりません…」
「何じゃつまらんの」


そう言ってどこからか取り出した煎餅(しょうゆ海苔)をかじる。私とガープ中将は海を眺めながらそのまま暫く無言で食べた。時折カモメの鳴き声が小さく聞こえる。


「…マリア、茶」
「………」


きゅぽんと水筒の蓋を開け、コップに熱いお茶を注いだ。私がここに来てからは、この人のお茶をいれるのは何故か私の役目。そして外で食べる二人きりの昼食もいつの間にか定番になってる。

(何がしたいんだろ…)

一体何の見返りを求めてこの人は私に構うと言うのだ。


「自分だけ可哀相な人間みたいな顔をしおって。お前みたいな奴はこの世界を探せばいくらでも居る」


「…マリア」
「なに」
「後で稽古するぞ」


偽善だとかエゴとか、そんな事はどうでも良い。私には関係ない。だから隣に座る老人が一体何を考えていようと、もはや私にはどうでも良い事のように感じられた。


――命題、果たして真実愛は地球を救うのか?
(野良猫は何の縋る術も知らない)



―――――
新兵時代の夢主とガープ中将。
ちょっと生意気な小娘風。

(title:アスケラッデン)

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