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新side
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ヒナタ、と名前を呼べば見上げてくる日向の瞳。
秘め事をその澄んだ瞳で暴かれそうな、そんな気がした。
ぶるりと身震いした。
欲しい、そう思った。
そう思ったのはヒナタが初めてだった。
「俺、茅ヶ崎新。新でいいよ」
「新センパイ」
にこりと微笑むヒナタに一瞬で恋に落ちた。
笹木日向に恋をした。
職員室で入部届を受け取る日向は、なんだかとても嬉しそうだった。
ヒナタが仮入部を経て正式に入部したのはそれから一週間してからだった。
ヒナタは、真っ先にオレのトコに来て、よろしくお願いします!と、声を上げた。
毎日顔を会わせるようになり、携帯の番号とメルアドを交換するのも自然な流れだった。
4月、バスケ部に入部したのが15人。5月になった時点で12人。
日向はやめずに残った。
「センパイ、お疲れ様です」
日向が中沢と部室を出て行く。
「おう」
手を上げて答える。
「あ、センパイ」
顔を覗かせて日向が笑顔を見せた。
「一緒に帰りませんか」
「いーよ。ちょっと待って」
急いで制服に着替える。
「センパイ、ちゃんと拭かないと制服濡れるよ」
部活の後、シャワーを浴びたオレはろくに身体を拭いていなかった。
1年の日向達はシャワーを浴びない。3年や2年の後になるからだ。
帰り道、中沢とは小学校が同じだった事(だよな、中学で日向見なかったもん)、日向に兄貴がいる事、なんかを知った。
日向の事を知るのはなんだか嬉しい。
楽しそうに横で喋る日向。ま、お邪魔虫が一匹いるけれどしかたない。中沢からすればオレのほうがお邪魔虫だ。
くるくる変わるヒナタの表情を見ているとそれだけで幸せな気持ちになった。
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