▼ 7
「ウミ」
ヒナタが帰った後、ウミの部屋をノックした。
ドアを開けると着替えもせずベッドに倒れ込んでいた。
「ウミ」
もう1度名前を呼ぶと、顔だけこっちを向けた。
「なんで殴った」
「気に入らない」
「だからって、空手やってるお前が素人に手を出すな」
「……」
ウミが押し黙る。
「なんで日向を知ったんだとかあえて聞かない。けどな、ヒナタにまた手を出したらただじゃおかないからな」
「……兄貴は、俺の事嫌い?」
「何、言って……。そんなわけないだろ」
アラタはウミの横に座る。
「ウミ、墓参り行かないか」
「え?」
「ソラの墓参り。今度の休みにさ。リクも一緒に3人で」
「うん、行く」
「ウミ、好きだよ。お前もリクもソラも」
「……。うん」
くしゃくしゃと染めた髪を撫でる。ウミの髪が光りで輝いて見えた。
「オレ、ウミの髪の色、好きだな」
金茶の髪をもう一度撫でて呟いた。
「もう、帰ってるなら帰ってるで連絡してよ、捜し損!」
ウミの顔を見るなりリクが文句を言った。
リクの後ろにはハギヤがいる。
「……にぃちゃんは?」
「寝てる」
ウミは自分の部屋のドアを大きく開ける。
ウミのベッドの上でアラタは眠っていた。
「なんでウミの部屋で? まぁいいや。ウミを捜している時にいい店見つけたんだ。今度行こう?」
「うん」
「シャワー浴びてくる」
リクはとたとた階段を降りて行った。
「……襲うなよ、実の兄貴を」
ハギヤはそう言って帰って行く。
ウミはアラタを振りかえる。
気持ち良さそうに眠るアラタ。
「アラタ、好きなんだ」
ウミはそっとベッドに手をついて、アラタにキスした。
俺を見て。アラタ。
ヒナタも、スバルも嫌いだ。アラタを好きだから。
俺だけ、俺だけを見て。
どうして、兄弟として生まれてきたんだろう……。
好き。愛してる……。
prev / next
bookmark
(8/8)