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日向side
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「ササキヒナタってアンタ?」
目の前に髪を金茶に染めた学生がいた。
中間テスト一週間前の今日から部活が休み。
自転車置場でセンパイを待っていた時だった。
「誰?」
見覚えのない顔だった。
「答えろ!」
「聞きたきゃ自分から名乗れよ」
「っるせ」
頬を殴りつけられる。
なんだ、コイツ。
わけもわからず殴られておれは思わず殴り返してた。
殴り返すとは思わなかったのか相手は驚いた顔をしている。
そのスキをついて腹に一発蹴り入れた。
「っ!」
ソイツが後ろの柱に背中をぶつけた。
「おれに何か用?」
「なんでっ兄貴だよ!兄弟揃って、なんで兄貴だよ。俺は認めない!」
「……え?」
「あんたの兄貴みたいにしてやるよ」
そう言って校門を出て行った。
センパイの弟?
スバルを知ってる?
「ヒナタ、帰ろうぜ」
センパイの声に振り返った。
「おまっ、それ」
頬の殴られたアト。
「何かあった?」
「ないよ。これ、さっきコケちゃってぶつけた」
センパイはすぐウソだと見抜いたみたいだけれど無理矢理聞く気はないらしい。
「うち来るか? 冷やさねぇと腫れるぞ。うち、誰もいないし」
センパイの弟の顔がよぎったけれど、センパイの家に行ってみたかったし、誰もいないならと頷いた。
センパイの家は学校から歩いて10分位のところにある住宅街だった。
家の中は静かだった。
「座れよ。冷やすもん持ってくる」
リビングのソファーに座ってセンパイを待つ。
すぐに冷たいタオルを持って来た。
殴られたところが熱をもっていたから冷たいタオルが気持ち良かった。
「オレの部屋に来るか?」
「うん」
2階の1番奥がセンパイの部屋だった。
「センパイ、兄弟いるの?」
「弟が2匹な」
部屋のドアを開けるとベッドの上に犬がいた。
「ただいま、ニルス」
犬の頭を撫でながらベッドの淵に座る。
「日向はこっちな」
椅子をこちらに向ける。
「うん」
椅子に座るとニルスが日向を見た。
「かわいい」
シェットランド・シープドック―シェルティ。
それがニルスの犬種だった。
「ニルスはオスだから、せめてカッコイイって言ってやれよ」
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