Aqua blue | ナノ


▼ 5

でもさ、とニナガワは続けた。
「高校入ってから接点なかったじゃん。何しにきたわけ?」
ニナガワの問いを無視してオレは廊下に出た。

ヒナタに電話をかける。
けれど、何度かけても留守電に切り替わるだけだった。


イケガミのクラスに目をやればすぐイケガミを見つけた。

イケガミのクラスにずかずか入ってイケガミの前に立つ。
「ヒナタが電話に出ねえ」
イケガミがオレを見上げてくる。
「だから?」
「あいつ、なんで休んでんだよ」
「今日は多分捕まらないと思うぜ? 携帯、持ち歩いてないだろうしな」
肝心な事を言わないイケガミにイライラする。
「だからっ!」
来いよとイケガミがオレを顎でしゃくった。
中学の頃のイケガミは間違ってもこんな事しなかったろう。

イケガミについて行った行った先は屋上だった。

「ヒナタさ、必ず人の左側にいるだろ、気付いてたか?」
「あーそういえば」
大概日向は左側にいることが多い。
俺が左側にいた時、さりげなく右側から左側に移ってくる。
「それが?」
「ヒナタは左耳、ほとんど聞こえてない」
「えっ」
イケガミが顔を上げる。
「ヒナタは病院」
「……そうか」
「誰にも言うなよ」
オレは頷くとイケガミはフェンスに寄り掛かり座った。

「イケガミ」
「何?」
イケガミが内ポケットからタバコを取り出した。ライターで火をつける。
「吸うか?」
オレは返事をする前にタバコに手をやった。
唇にタバコを乗せるとイケガミがライターをオレに放った。
「タバコ、吸うのか」
「フツーだろ。お前だって吸うじゃん」
イケガミはフンと鼻を鳴らした。

「ヒナタ、なんで耳聞こえないんだ?」
「……」
イケガミは黙った。黙ってオレを見上げる。
「本人に聞けよ。アイツが言うかわかんねぇけどさ。まぁアイツ聞こえないのかなり気にしてるから耳に関しては聞かないほうがいいだろうな」
イケガミが立ち上がる。
ふと気付いた。
カイチョーとオレに呼ばれていた頃のイケガミはオレより身長が高かった。
けれど今はオレのほうが高くなっていた。
いつも笑顔で自分を迎えてくれた。
けれどその笑顔はもうない。
「なぁ笑えよ、あの頃みたいに」
「はぁ? 何言ってんだ」
不審そうに眉を寄せてオレを見る。

prev / next
bookmark
(5/13)

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -