短編 | ナノ


▼ 境界線

ぼんやり天井が見えた。

ああ、生きてる。そう思った。
「ったく、いい加減にしろよな」
ドスの入った声が降ってくる。
声のほうに視線をやると男が壁に寄り掛かり自分を見ていた。

「それ、治るまでこのベッドから出さねえからな」
左手首には包帯が巻かれていた。
ニヤリと浩二は笑った。いやな笑いだ。


浩二はいつの間にか住み着いた。大学でも顔を会わす事もほとんどなく。
けれど当然の顔して住み着いてしまった。

「死ねなかったんだ」
ぽつりと尚紀は呟いた。

死にたい。
死にたい。
でもいつも失敗だ。
もう何度目だろう、助けられたのは。

ちゃり、耳元で何かが鳴った。
右手には手錠がかけられベッドヘッドに繋がっている。
そしてベッドの周りは綺麗に片付けられていた。

「俺がかってやるよ」
「え?」
「もうすぐ卒業だろ」
怪訝な顔で尚紀は浩二を見上げた。
「ペットみたいにな、飼ってやる」
浩二が近づいて来る。
「で、おもいっきり可愛がってやるよ、ナオ。
いつも以上にな」

かうって飼うかと気付いた時には浩二はすぐ目の前にいた。

「死にたい? でももう死なしてやらない」



浩二は本当に僕をベッドから出さなかった。

いつもよりやさしい愛撫に身体が震える。身体が戸惑う。

いつもの浩二は激しい。

だからなのかいつもより感じた。


手首に巻かれた包帯に浩二はキスした。



なぜ死にたいか、浩二の前でこうして自殺をはかっても浩二は聞かない。

聞かないのに僕を助ける。


『かってやるよ』
『もう死なしてやらない』
浩二の言葉。


僕らの歯車が軋んだ、そんな予感がした。

それが、浩二との関係を大きく変えるなんて思っていなかった。



070202
070407

これは短編のつもりで書いたものだった。

けれどいいものが思いつかなくて放っておいたものに少し付け加えて拍手に使い回したものです。

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