短編 | ナノ


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なんで?

ついさっきまで笑ってたじゃないか。

つい30分前までお前の部屋でお前とキスして。

その後、俺は家に帰って親父の飯作って(ウチは父子家庭)。

お前のお袋さんから電話貰ったのは5分前。

「なんで?」

ベッドの中で眠っているだけ。そんな風に見える。

「起きろよ、コージ」

恋人の身体を揺さ振る。

「ずっと傍にいるって、言ったじゃん!」

突然の恋人の死。

お袋さんがご飯よと、2階にいるコージを呼んだ。
食い意地の張ってるコージが降りて来ないのを不思議に思って2階に上がりコージの部屋に入り、死んでるコージを目にした。

慌てて俺に電話をくれた次第。

横で泣きながらお袋さんはどうして?を繰り返している。

「間に合うよ」
コージの胸に両手をあて、心臓マッサージ。
5回やって人口呼吸だっけ?

やり方なんてわからない。それでも。

「帰って来い、コージ! 帰って来いよ、コージ」


けれど、奇跡は起こらなかった。


コージの死後、瞬く間に通夜、葬式、初七日と過ぎていった。


コージの死因は自然死。
特に原因はない。
そういう死もあることを初めて知った。

あの後、コージの兄貴が帰って来て病院に電話をかけた。


いつもコージと来ていた公園のベンチに腰をかける。

やさしい風が吹き抜ける。
ふと目をやると、コージの兄貴とうちの兄貴が公園の隅で煙草を吸っていた。

兄貴が俺に気付く。
俺のところまでゆっくり歩いて来た。
「ホントは線香がいいんだろうけどな。あいつ、煙草吸ってたろ」
「兄貴……」
「なぁ、真也。泣いていいんだぜ?」
コージの兄貴が言った。
「幸治を愛してくれてサンキュウな」
「し、知ってたの」
「まーね。俺らもそういう関係だからなんとなく、わかった」

それを聞いた途端涙が溢れた。
近くに理解者がいたことに安堵したのか、はたまた違う理由か、自分でもわからない。

けれど、通夜でも葬式でも泣けなかった俺がわんわん声を上げて泣いた。

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