最強男 番外編 | ナノ


▼ ちょっとした非日常

くしゅ、とくしゃみをした。
ふと顔を上げれば千里がこっちを見ていた。

なんとなく気恥ずかしくて横を向いた。

「さっきからくしゃみばっかりしてるな」
「あー、うん。大丈夫だよ」

昼間、冷房が寒く感じるほど冷やされた室内に仁はいた。

「風邪ひいたか」
「大丈夫だよ。くしゃみだけだもん」
「風邪を甘くみるな」

早々とベッドに押し込まれ仁は暇を持て余していた。



千里がいれば話し相手になるが、今、部屋には仁だけだ。

「暇だよ、千里さん」
呟いてはみるけれど返事は当然返ってこない。


テーブルにあった本を手に取る。千里の部屋にあるのだ、千里のだろう。

本を開いてぱらぱら捲ってみる。
いつの間にか仁は本の世界に浸っていた。

警察からはみ出した刑事と探偵が一つの事件を追うストーリー。


気付けば千里が部屋に戻ってきていた。

「この本、面白い」
本の表紙を見せる。
「先に読まれたか」
仁が今読んでいる本は新刊だったのだ。

「千里さんが暇さえあったら読んでた本て、これ?」
「の、シリーズだ」
「シリーズになってるの? 読みたい」
「後で持ってきてやる。その代わり、安静にしてろ」
「大袈裟だと思うけどなー」
くしゃみ以外はなんともないのだ。

「仁……」
「わかった、安静にしてるから」


次の日、咳をしている仁がいた。
積み上げられた本。

「夜更かししてたな、お前。ベッドを明け渡した意味ないぞ」
「ごめん、つい……。だってやめられなくて」
そこで咳をして。

千里が仁に手を伸ばす。
額にあてられた手が気持ち良かった。

「熱あるな」
千里の手が離れていく。

「待って、千里さん。ちょっとの間、こうしてて」
千里の身体を引き寄せて擦り寄る。


「どうした?」
「ううん……」
千里の大きな手が仁の頭を撫でる。

「千里さん」
「ん?」
「今日1日だけ休みちょうだい? 絶対今日中に治すから」
「わかった。ちゃんと寝てろよ?」
頷いて千里を部屋から送り出す。



夜、千里が帰ってきた時、仁は眠っていた。沢山汗をかいて。
額に手をやると熱も下がっていた。
サイドテーブルにミネラルウォーターとコップを置いて、部屋を出た。


070715

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