四翼の悪魔 | ナノ


▼ 2

互いにはぐれた者同士、ティーはアンリとこのアルゴンの丘で逢うようになった。


「アンリの瞳は鳶色をしているんだね」
アンリの瞳は鳶色をしていた。悪魔の瞳は漆黒の闇の色をしているのが普通だ。

「ああ。この目のせいで疎まれた」
「綺麗なのに」
「そう言ってくれるのはティーだけだな」

アンリがティーの瞳を覗き込む。

「お前も鳶色だ」
「アンリと同じだよ」
ふっとティーは微笑んだ。

アンリは時間のある限りティーに会いに行った。

アルゴンの丘の隅、空からも地からも見つかりにくい場所にいた。

アンリがティーを見つけたのは偶然に他ならない。

「アンリ」
アンリが顔を出せばティーは微笑んで迎えてくれた。

「よう」
アンリが来るときにはティーはたいてい先に来てアンリを迎えてくれた。

ティーの隣にアンリは座った。

「ねぇ、アンリ」
「なんだ?」
「僕は、どうして天使なんだろう」
「天使に生まれたからだろ」
「悪魔に生まれていたら、もっと早くアンリに会えたかもしれないのに……」

アンリはくしゃりと金色の髪に手を入れて撫でる。とても柔らかかった。

「俺はティーが天使で良かった」
「どうして?」
「はみ出し者の天使と悪魔だから出会えたと思うからな」
「そうかもしれない」
クスリとティーが笑う。ティーの笑みはとても綺麗でアンリを魅了した。

撫でた手を自分に抱き寄せる。

ティーはアンリの腕の中にすっぽり収まってしまう。

「お前は暖かいな」
「……うん」

ティーも腕を回し、アンリに抱きついた。

「嫌い? この鳶色の瞳」
「……」
「嫌い?」
「……嫌いって言えないだろ。同じとか言われたら」
「うん。好きに好きになるのは無理でも嫌いにならないで。疎んで欲しくない。アンリの瞳は澄んでる。綺麗だよ」
「そうか」
アンリはティーにつられて笑みを作った。

「悪魔も笑うんだね」
「そりゃあ、笑うさ」

天界では悪魔は、良いようには扱われない魔のモノ、天に背いたあるまじきモノ。そう教えられてきた。

天使の中には悪魔を毛嫌いする者もいる。そういう天使のほうが多い。



ティーは不思議に思っていた。

悪魔に触れもしないで会話もしないでそんな嫌いだなんてなぜ言えるの……?

prev / next
bookmark
(2/2)

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -