近所の公園を通れば、加賀がベンチに座っていた。
見つかれば厄介だ。草木は気付かぬ振りして通り過ぎた。
コンビニで兄に頼まれたアイスを買いまた公園の前を通りかかった。
加賀は同じ格好のまま、ベンチにいた。下を向き、考え事をしているようにも見える。
加賀の家も近いのだろうか。
ふっと加賀が顔を上げ、目があった。
「草木」
「加賀……」
加賀が近付いてくる。
「コンビニ行ってたの?」
コンビニの袋を見て加賀は首をかしげる。
「兄貴のパシリで……」
中を覗き込む加賀に一つアイスをあげた。
「暑いから」
「サンキュー」
「溶けちゃうから、帰るね」
「警戒してる?」
伺うように見つめられて目をそらす。
「ま、いっか。アイス貰ったし」
袋を開けて赤い舌がアイスを舐めた。無意識にこくりと唾を飲んだ。
舐め方がなんだがやらしくて。
「期待してんの?」
ハッとして慌てて首を振った。
ククッと加賀が小さく笑う。
「帰んな。草木」
しっしっと追い払うように加賀は手を振る。
「佐野が来る。だから、帰りな、草木。アイスに免じて今日は見逃してやるからさ」
「加賀」
「何?」
「ありがとう」
「何、それ。礼って」
おかしそうに笑い、加賀はベンチに戻っていく。
加賀も佐野も悪い奴じゃない。
そう思うのは感覚が麻痺したせいかもしれない。
「緋沙矢」
佐野に呼ばれ顔を上げれば佐野がいた。
「ういっす」
「お前、アイスなんか食いやがって」
「あちーし」
まぁな、そんな顔をして佐野は加賀の横に座る。
「んで? 誰に貰ったんだ? 草木ちゃん?」
「……よくわかったな」
「お前が選ぶアイスじゃないからな。それにこの近くじゃん? 草木ちゃんチ」
「そうなのか? なんだ、わりと近くに住んでんだな」
「知らなかったの?」
「知らねーよ」
答えて立ち上がる。
「で、フミ。どこ行くんだ?」
「草木ちゃんチ、の予定だったんだけど緋沙矢が草木ちゃんを逃がしちゃたからね、緋沙矢んチでゲームでもするか。草木ちゃんと遊びたかったんだけど」
加賀は肩をすくめた。
「たまにはいいだろ」
「緋沙矢、やさしー」
「バーカ」
そんな、日曜日。
20131117