O-13 首輪
ここに閉じ込められてどのくらいになるだろう。
ベッドが一つ。
それしかない部屋。

いや、まだあるか。
和威は壁を見上げた。

打ちっぱなしのコンクリートの壁にはフックが幾つか付いている。
天井にも。

ちゃりっと鎖が音をたてた。

和威の首には南京錠のかかった首輪。首輪からは鎖が付いている。
5メートル程の長さの鎖。
それは壁にしっかりと固定されていた。


「水、飲みてぇ〜」
一日放置され和威の口の中はカラカラに渇いていた。


真夏だぞ、ほっとくなよ。死ぬぞ。


気が遠くなる。


カチャ。
ドアの開く音。

「どう? 言う事聞く気になった? 和威」
「誰、が」
「ふうん。そんな事言うならもう一日ほっとこうかな」
「やっそれは!」
にこりとそいつは笑った。

「じゃあ言えるよな」
「将人」
「違うだろー。まぁお前から名前言われるのいいから許す。
ほら、和威。たった一言だぜ?」
将人は和威の大学の同期で。

親友のハズだった。


「水欲しいだろ?」

ぴくり、だるい身体が反応する。

「水……」

「言え、和威」

「オレは……」

ゆっくり目を閉じる。

「オレは……、将人のものだ」


将人は手に持っていた袋を和威に渡した。

「ご褒美にあげる」
それはうす茶の首輪だった。

「着けてあげる」

鎖付きの首輪が外される。

そして新しい首輪が着けられた。


「はい、水」

ペットボトルが差し出され奪うように飲み干した。


「部屋移ろうか、和威。ここ暑いだろ」



ああ、やっとこの部屋から離れられる。
そう思ったら、急速に意識が離れていった。

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