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風祭が唇を噛む。
「怖がらせてごめんなさい」
天狗は風祭の前まで来て頭を下げた。
「それ、どれに対して謝ってんだよ……。ビデオ撮った事? ヤられんの見てたこと? 鞍馬を止めなかったこと? ふざけんなよっ!」
怒鳴る風祭を初めて見た。
謝られても、はい許しますなんてできないだろう。直接風祭に手を出したのが鞍馬でも。
それに風祭は天狗が現れてからずっと天狗に手を出されたのだと思っていたのだから。
「謝られても無理。俺は許せないから。謝らなくていい。も、天狗だろうが鞍馬だろうがどっちでもいいよ。共犯な事に変わりない」
「謝ったのは去年の事じゃない。謝って許されないのはわかってるよ。謝ったのは鞍馬が死んでからの事だよ」
天狗が周りを見てライちゃんを見つけて、ライちゃんにも謝った。
ライちゃんはなんでって顔して。
「鞍馬天狗。鞍馬のフリしてた。あの時点で本物は死んでるから。ふくろうが真壁だって知ってたよ」
「どうやって知った?」
「簡単だよ。真壁の携帯見たから。パスワード、自分の名前と誕生日の組み合わせはやめておいたほうがいいよ」
「……ああ、うん」
天狗はまた風祭を見る。
「風祭」
「お前にわかるわけない。俺がどんだけ――」
「わかるよ。わかるよ! わかってるよ。どんだけ風祭が傷ついたか、わかる!」
「……」
「わかるから、警告したんだよ……」
ライちゃんが何か気付いたように前に出た。
「天狗、もしかして鞍馬に脅されてた? 身体、さし出したとか……」
「ん、なわけ……」
「弱みって何?」
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