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はあ、ここで全部話してしまえばいいんだ。風祭もいるんだし。
風祭を見ればじっとしてて、オレらの話には入らない。
入らないよな、そりゃ。
風祭は天狗が怖い。自分をレイプしたかもわからない奴、オレだって風祭の立場なら話せないだろう。
テーブルの下でぎゅっと拳を握る風祭の手をぽんぽん叩いて上から握ってやった。
風祭が顔を上げてオレを見た。
助けを求めるような縋る目が印象的で、慰めてあげたくなる。
「はなちゃん、そりゃないでしょ。僕の前でそれやめて」
「うらやましい?」
「僕を怒らせないほうがいいんじゃないの? 三度目があるかもね」
天狗がそう言った途端、びくんと風祭の身体が跳ね、風祭の手が逃げた。
風祭の膝の上に取り残されたオレの手。
逃げた風祭の手を追って握りなおした。
「何がしたいの、天狗」
かたかた震えてるのが手から伝わってくる。きっと風祭はここから逃げ出したいに違いない。
「……何、か」
くしゃくしゃ髪をかき混ぜて、下を向く天狗は手の中にあったUSBメモリーを弾いた。
テーブルを滑り風祭の膝に落ちた。
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