最強男 | ナノ


▼ 12

「処分か」
千里の固い声。

「圭介」
「はい」
「俺はお前を処分する気はない」
「なぜです? オレは会わせてはならない2人を会わせてしまった。オレの落ち度だ」
「仕事のミスというわけじゃないだろう、圭介」
「けれど――」
なおも言いかける圭介を手で制した。

「わかった」
静かに千里は口を開いた。


「初瀬、黒田に連絡しろ。ナンバー2の、圭介の穴は黒田に任せる」
「く、黒田さんですか」
「なんだ、ナンバー2が黒田だとイヤか?」
「め、滅相もありません」
ぶんぶんと首を降る。

「千里、圭介さんを降ろすの!?」
「処分とはそういうものだろう、仁。圭介は黒田に引き継ぎをしろ。折って、お前をどうするか決める」
「……はい」
圭介が静かに頷く。

「処分する気ないのになんでするんだよ、千里」
「されたがったのは圭介だ」
「でも! ナンバー2を降ろさなくてもいいだろ」
圭介は自らナンバー2を降りたいと思ったはずはない。仁は圭介がナンバー1になりたくて族チームを作ったのを知っている。
ナンバー1になりたい、そう思った圭介が東雲のナンバー2を手放すとは思えなかった。

「圭介さん! いいの、手放して。ナンバー2を手放してホントにいいのかよ」
ぎゅっと圭介の腕を掴む。

「仁は知らなかったな、オレが東雲のナンバー2になったワケ」
「……知らない」
「前組長、千里の父親、オレの父親でもあるけど……。あの人と取引したんだ」
「取引?」
「まだその時、オレは千里が疎ましかった。千里を認めてなかった。親父は千早を次の組長にしたかったし。千里を引きずり降ろすために親父がオレをナンバー2にしたんだよ」
「……」
「今は純粋に千里を慕い、ナンバー2の仕事をしていた。だから、今度は自分の実力で、ここまで上ってきたいんだ。今のままだとオレが自分を許せないから」
「……ケイさん、まさかわざと?」
圭介は微かに笑った。
そしてこそりと耳打ちした。

「黒田には気をつけろ」
千里には多分聞こえていない圭介の小さな声。


「またな、仁」
少しすっきりした顔をして圭介は東雲金融を出ていく。その後を千里が追った。

窓から外を見れば千草が待機していた。
その車に千里と圭介が乗ると車はビルから離れて行った。


「こー来るか」
その声に振り返れば朱里がいた。

「バカちさっちゃん。仁も連れて行けよ」
仁の横を通り抜け朱里はソファーに座る。

「初瀬、黒田に連絡したの?」
「は、い」
「厄介だなー。黒田か。ちさっちゃん、なんで黒田だよ」
コンビニの袋からキャンディバーを出して舐め始める。

「仁、日立の事務所戻んな。弾が来るはずだから弾に従え」
朱里の言葉に頷いた。

「ああ、仁。黒田にあんまり近づくな」
「……黒田さんて、どんな?」
「会えばわかる。行け」
追い払われるように東雲金融を出て日立の事務所に帰ってくる。事務所には誰もいなかった。

「泥棒に入られたらどうすんだ」
呟いてソファーに座る。


数十分してやっと弾が事務所に入ってくる。

「弾」
「予想外の展開。千里、なんで黒田にしたわけ? おれ、予想は秋吉だったんだけど」
「……え?」
「黒田よりも適任いるだろ」
「……弾、知ってた?」
「ああ、朱里兄と仁? 当たり前だろ。圭介が知ってて連れて行くことも知ってたよ。圭介の行動が早いのにはびっくりしたけどな」言いながら弾は冷蔵庫を開け麦茶を取出し、コップに注いだ。

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