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「静かですね」
「ああ。ありゃ、そーとー怒ってるぞ」
「くわばらくわばら」
ジロリと千早は同僚を睨みつけた。
どこ行きやがった! 仁のヤロー!
仁の家にも行き、結局事情のわからないまま千早は職場の椅子に座っている。
仁がいなくなって一ヶ月。
「ちー。今日も捜すの?」
同期の湯川真幸が話し掛けてきた。
「そのつもりだ」
「ちーは、仁の事、気に入ったんだねー。今まで人と触れ合う事避けて来たでしょ」
千早は少し顔を上げた。
「まーな」
「見つかるといいな、仁のヤツ」
「はた迷惑なヤツだよ、ったく」
真幸はぽんぽんと千早の肩を叩いた。
その頃仁は意外にも近くにいた。
そう、千早達のいる署の前に。
頭を下げ、礼をして仁はその場を後にした。
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