最強男 | ナノ


▼ 9

「待ってて、ここで」
いつ千里が撃たれるのかわからない。だから車を止めた時、言った。

「ああ。ほら、行ってこい」


幼稚園の中に入って千歳を探す。

「千歳」
千歳はすぐ見つかった。

最近仲良くなった男の子といた。

「仁」
「帰ろ? 今日のお迎え、千里も来てるよ」
「ほんと!?」
ぱっと千歳の顔が明るくなる。

「じゃあね、七浬君」
千歳が七浬に手を振る。

「また明日な、千歳」
七浬も手を振る。


千歳と手を繋いで車に戻る。

「ただいま」
後部座席のドアを開け千歳が大きな声を出す。

「おかえり」
千里の大きな掌が千歳の頭を撫でた。
嬉しそうに千歳が笑った。

本宅に向けて車を出す。

本宅の屋敷まで何事もなく戻って来る事が出来た。

千歳が降り、千里が車から降りる。



玄関迄の数メートルだった。


「仁!」
千里の声が聞こえ振り返る。

どん!

そんな音を耳にした。


気付けば千里が仁をかばうように上に乗り、地面に倒されていた。

「千里さん!」
見れば千里のスーツが朱に染まっていた。

「千里さん! しっかりして!」
「仁さん!」
千草の声に顔を上げる。

「千草さん!」
千草に組関係の連絡を任せ仁は救急車を要請する。


仁の行動によって千里が生きるか死ぬか決まるんだよ、そう言った千咲の言葉が仁から離れなかった。


腕の中にいる千里の体温が急速に下がっているのを感じた。

不安そうに玄関へと先に入った千歳がこっちを見ていた。

「千歳、タオル持ってきて!」
頷くと千歳は廊下を走っていく。

「千里さん」
咄嗟の事で、再び千里さんになっているのも気付かず名前を呼ぶ。

「千里さん、すぐ救急車来るから。頑張って! 死んじゃダメだ」

千歳が沢山のタオルを持って帰ってくる。

「ありがと」
手で押さえついた傷痕をタオルで止血する。

千歳の顔を見れば今にも泣きそうだった。

「大丈夫。千里さんは強い人だよ。こんな事で――」
死ぬもんか!

ぎゅっと千歳を抱きしめた。

prev / next
bookmark
(9/20)

[ back to top ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -