最強男 | ナノ


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千草の煎れたミルクティーを飲み、マフィンを頂く。

「これだけで優雅な気持ちになれる」
これまでの生活にこんな一時がなかったから余計にそう思う。


それから数時間後、千里と弾、珠希がリビングに顔を出した。

「お疲れ様」
千里が仁の横に座る。
弾は向かいに座った。

「もー、やだ。あたし、来月から幹部会出ぇへん」
珠希は千里の反対側の仁の隣に腰をおろすとわめいた。

「そう、言うな。珠希」
千里がふぅと息を吐く。

「おれ、部屋戻るわ。あ、仁。……来いよ」
「え? うん」
「千里。仁、借りる」
「ん」


弾の部屋は広々としていた。千里の部屋よりずっと広い。倍以上ありそうだ。

「千明の事だけどな」
「あ、うん」
「東雲組が犯人を追う事はない。幹部会で決まった。たぶん警察も厚也を捜しきれず、捜査は打ち切りになる。千早が言うには犯人に繋がる物的証拠がないそうだ」
「そっか……。ありがと、弾」
仁は礼を言った。

「あとな、仁。千里はたぶん気付いてる」
「まさか」
「一応、組長だぜ? 知らないっていうのもおかしな話だと思わないか?」
「けど……」
「まぁ、一応知ってるかもっていうのは頭に入れとけ」
「わかった」

頷いた仁に弾は言う。
「ほとぼり冷めたら厚也の家にまた、バランタイン呑みに行こうぜ」
「うん。……千明、も?」
「おれいたら、嫌がるんじゃね? 嫌われてっからな」
「嫌われるような事、やったの?」
「さぁ? 覚えてない」
弾は首を傾げる。


こんこんとノックの音。
「どうぞ、開いてる」

顔を覗かせたのは千歳だった。

「そっちに行ってもいい?」
「おいで、千歳」
仁が言うと駆けて来た。


「弾ちゃん、仁取らないで」
「仁は千歳のじゃねーだろ」
「千歳のだもん!」
ね?と、首を傾げて見つめて来る千歳に曖昧に返事を濁した。

「もてるな、仁」
「あはは」
なんとなく笑って誤魔化す。

「なんであんな事言った?」
「あんな事?」
「ずっと好きでいて」
「ああ、厚?」
くすりと笑って仁は横にいる千歳を抱き上げた。

「厚はさ、俺の事、すごく執着してて。多分俺の事好きなんだろうって学生の頃思ってた。この前告白されてやっぱりって」
「で?」
「返事はいいって。答えられないって知ってるんだろうね」


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