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そこに唐獅子がいた。
「すごい……」
そこに獅子がいるが如く、唐獅子は日立の背中に息づいていた。
「棗のじい様作だ。じい様自信作。千里のは親父だったか?」
「ああ」
「見せろよ、久しぶりに千里の虎見たい」
「見てどうする」
「オレ見たい。千里兄の虎、見たことないもん」
千明が千里を見上げる。
千里は息を吐き、立ち上がった。
昨日見た金色の虎がこっちを見ていた。
「すっごく迫力あるよな。すげー……」
千明が虎の迫力に押されていた。
「日立さんはいつ刺青を?」
「千里と同じ18だ」
「千明も?」
「オレは入れてない」
ほら、と千明が背中を向けたが、背中には何も描かれていなかった。
「ヤクザ者が全員入れるってわけじゃない」
横から珠希が口を出した。
「実際わたしも刺青はないし。あと、誤解されてるようやから言うけど、わたし、千里を弟のようにしかみてへんから。なぁ千里」
「姉弟だな」
「そ、血の繋がらない姉弟。気にせんでええよ、わたしの事。それ言う為に来たんや。なんやゆーたらすっきりしたわ」
珠希は言葉通りすっきりした顔をしていた。
「わたし、千里より仁のほうが好みやわ」
「やらねーよ」
「冗談やん」
つまらなそうに珠希はソファーに身を沈めた。
「仁、千里をよろしくな。千歳に千里も加わるけどええよね?」
「はい」
頷いていた。
「仁て素直でいい子やね。ヤクザにはむかへん。けどあたしは好きよ、そういうの。自分色に染めていけるから。なぁ千里?」
「……そうだな」
ふふっと珠希が千里を見て微笑(ワラ)った。
「楽しみやわ。仁がどんなヤクザになるのか。どんな風に登り龍を背負っていくのか」
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