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仁は警察署の前に立っていた。
1ヶ月振りの警察署。
なんとなく、なつかしささえ感じた。
多分、もう来る事はないところ。
スーツの内ポケットには退職届。
署内に入り何人かの顔見知りに会う。
そうして着いた署長室。
あっけないものだった。
今日付けで仁は刑事をやめた。
再び署の前に立ち、頭を下げた。
最後に頭によぎった千早センパイの顔。
ごめんなさい、そう呟いた。
ごめんなさい。そして、ありがとう。
今日付けで刑事をやめ、今日付けで仁は刑事とはま逆の職業に就いたのだ。
そう、ヤクザという職業に。
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