最強男 | ナノ


▼ 15

弾が厚也を前に押しやる。

「御堂か」
「ああ、斎藤に御堂をつける」
「いいんじゃない?」
弾は一つ頷いて御堂を小突く。

「御堂。斎藤厚也だ」
「よろしく」
御堂は主人となる厚也を見たがにこりともしなかった。

「斎藤、お前に御堂を付ける。御堂は日立一族の者だ。日立一族については弾が説明したか」
“日立”を付けられることを弾に聞いていたのか、厚也は頷いた。

「御堂、斎藤厚也だ」
「御堂と呼んでもいいか」
「どうぞ。呼びたい名前で」
「短い間かもしれないけれど、頼みます」
厚也は頭を下げた。

「こちらこそ、よろしく。斉藤さん」
どうみても御堂のほうが年下だ。年下に頭を下げた厚也を、御堂は守ろうと思った。

たいていの場合、御堂より年上の人物に付く事が多い。

そんな場合、守ってもらうのが当然の態度をとる者がいる。そんな奴が御堂は大嫌いだった。例えそれが3家の身内でも。

厚也は御堂が自分より年下だとわかったはずだ。

「斉藤さん、オレ絶対、怪我1つさせないから」
「ありがとう」


そこに渚が現れた。千歳が後ろに隠れて厚也を見ていた。

「用意出来たよ」
「飯にするか」
そう言って千里は千歳に目を向ける。

「千歳? でかくなったな」
御堂が千歳の頭を撫でようとして、千歳はそれをかわし、千里の後ろに逃げた。

「……」
「人見知りするんだよ、千歳」
くすくす笑って渚が言う。

「渚、今日のメニューは?」
弾が聞く。

「オムライス」
「マジ!!」
弾は渚の作るとろとろオムライスが大好きだった。

千里は厚也が千歳を見ているのに気が付いた。
「俺の子だ」
「結婚、してたのか」
「まぁな」


リビングには珠希がいた。
「遅い!! 早よ、座り」
珠希の急かす声に弾が座る。その隣に厚也が座る。

「御堂、あんた、そっち。そこはあかん」
厚也の隣に座ろうとした御堂に珠希は声を上げた。

「なんで?」
「そこは仁の席。誰もそこには座ったらあかん。大黒柱の千里の席が決まってるように、千里の右隣は仁しかあかんねん」
「じゃ、左……」
「うちの席や」
「ちょ……ちーちゃんの隣座れないじゃん」
「やかましいわ。あんたは千里以外を見なあかん。他にもいい男はおるで」
「いいだろ、憧れるくらい」
「あかん。千里はうちと仁のもんや。そうやんな、千里」
「そうだな」
「仁って誰?」
むっとした顔で御堂は聞いてきた。

「お話にならんわ。仁を知らんて。組ん中では有名やったやん。なぁ、蓮池」
珠希は側にいた蓮池に同意を求めた。

「あ、はい。そうですね」
「マジで。雛、知ってんの」
蓮地のフルネームは蓮池雛生(ヒナキ)という。

「で、その仁て奴、何処いるんだ」
誰も答える人はいない。

「あ、え、何?」
「……御堂、それについては後で、そうやな、厚也にでも聞き。厚也、やんな?」
厚也の顔を見て珠希は聞いた。

「初めまして、やな。東雲珠希、や。よろしく」
「珠希さんは……、東雲さんの……」
「ああ。うん、そうやで。そこにいる千歳は千里とうちの子やし。仁がすごく千歳の事、可愛がってくれるんや。な、千歳」
こくんと千歳は頷く。


「珠希。食おうぜ。それ、後々」
弾のその言葉に昼食は始まった。

「あ、弾。黒田に連絡入れたか」
思い出して千里は弾に顔を向けた。

「あ!! やっべぇ……」
「食ったら帰る。御堂、厚也のこと、任せたからな」
「了解」

慌てたように弾は食べ終え、走り去っていった。

「相変わらず弾兄には黒田さんがべったりなわけ?」
「みたいだな」
「ふうん。それってさ、弾兄、恋人作れんの」
「さぁな」
千里は肩をすくめる。

「斎藤。あとで御堂と話すといい。四六時中一緒にいることになるからな」
「はい」
「御堂。その後、もう少し睡眠とっておけ」
「なんで?」
「斎藤はホストだからな。夜に動くことになる」
「え、厚也、ホストなん?」
横から珠希が横から入ってきた。

「お店行きたいわ」
「僕も」
千歳が遠慮がちに手を上げる。

「仁、帰ってきたら行こっか、千歳。VIP席座ろうな。千里、連れてって」
「今度な」
「やった!!」
珠希と千歳が喜ぶのを横目に見て千里は口を開いた。

「その時はよろしく頼む」
「ジュースも用意しておく」



御堂はごちそうさまと言いダイニングを出て行こうとする。

「御堂。厚也も一緒に連れて行き」
「これから寝るんだよ」
「せやから、厚也も寝るやろ。この時間は寝てる時間やろ、ホストなら」
「ああ、そういうこと。斎藤さん、こっち」

御堂と厚也を見送って珠希は千里を見上げた。

「仁、無事に帰ってくるやんな?」
「帰ってくる」
「そやな」
こくっと珠希が頷く。
千里は珠希の肩を叩くとダイニングを出た。千歳が付いてくる。

「千歳。御堂と斎藤……厚也のとこに行くけど来るか」
「うん」
千歳がスリッパを鳴らしながらあるく。その音、歩き方が仁とそっくりだった。歩き方は親に似ず、仁に似たことにおかしくなる。

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