小説(短編) | ナノ
エジソンの箸(マルコ/男受主)






自分で言ってて恥ずかしいが、この歳になって告白された。というか、告白されている。それも随分年下で、もっと言うなら未成年だ。しかも、男。男ばっかりが同乗し、生死を共にする海賊船の上では、こう、男同士の関係も珍しくないのは誰もが知っている。しかしまあそれは今まで我慢に我慢に我慢を重ねてきた男達が耐えられなくなって、同性に手を出す、例えれば、空腹で死にそうだが目の前にはカビが生えて緑色になったパンしかない。でも、もう1ヶ月は何も口に入れていないため、もう食い物ならなんでもいいか、と血迷い、それを口にする状況だろう。つまり、そうやってちょっとおかしな状況に陥るのは、それなりの苦痛を経験した人間だけだろうと思っていた。だからこそ、まだ思春期真っ盛りの少年がおかしなことになっているのには驚いた。
もしかしたらそういう趣味なのか。





『ち、違います?』





「いやいや、俺に聞かれても」





聞きたいのはこっちの方なのに、ちょっと赤くなったファーストネームは、床を見つめたまま首を傾げた。あれだ。若気の至りって奴だ、きっと。じゃなきゃ男なんかに興奮しない。そもそもこの船には親父専属の優秀なナースがいる。ナース服という名のタイトなワンピースからすらっと伸びる生足や二の腕なんか、大好物じゃないのか。





『おれもよく分かんないし・・・』





どういうわけか全く分からず、とにかくいろいろと質問攻めにしてみると、ファーストネームは涙をいっぱいためて、目を泳がせた。なんだ、この可愛い生き物。胸の前でもじもじと手を触りながら、だってこんなの初めてだし、と小さな声で呟くファーストネームが、その辺の女よりもずいぶん華奢で、可愛らしく感じた。
でもやっぱりファーストネームはこれから先、だいぶと長い人生を生きていくわけだし、将来はべっぴんで気が利く女と結婚してちゃんと子どもも生んで、普通に生活していってほしい。こんなところで道を踏み外さないでほしい。





「嬉しいけどよい」





とりあえずやんわりお断りしようと思い、そこまで口にした瞬間だった。今まで表面張力のおかげで留まっていた涙が一気に溢れ出したようで、ファーストネームの頬には大粒の雫がぼろぼろとこぼれた。やばい、と思い、慌てて腰をかがめて目線を合わせると、親指で涙を拭った。少し強引に擦ったもんで目をぎゅっとつむって顎を引いたファーストネームは、相変わらず胸の前で両手を握り合わせていた。
泣くなよい、嫌いじゃないから。そう言うと、ファーストネームはつむっていた丸い瞳を見開き、俺の目をじっと見た。目力に負けて思わず固まってしまっていると、ファーストネームは俺の手を掴み、なら、と息を吸い込んだ。





『おれに恋愛の仕方、教えてください・・・!!』





ああ、やってしまった。完全にファーストネームにハマった。惚れた。まあいいか、海賊やって酒を飲みまくって体を酷使しまくってる俺の人生なんか、せいぜい後30年ちょっとだろう。それなら捧げよう。この色ののない人生を、可愛い可愛い弟分に。









エジソンの箸




(恋愛の仕方、手取り足取り教えてやるよい)




fin




20110814


こう、エジソンの箸って、手取り足取り箸の正しい使い方教えますよって感じがしませんか←





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