小説(短編) | ナノ
恥ずかしがりやな君へ(エース/ 男攻主)
「おいファーストネーム」
『ん?』
呼ばれて振り替えると、背中誇りを隠すためにシャツを羽織ったエースがいた。用件は買い物に付き合えとのことだった。特にここでやっておきたいことがなかった俺は、エースの頼みを快く了承した。まぁおおかた自分専用の肉の調達だろう。持ちきれない分を俺に持たせる気だ。
エースはいつも用意周到て、島で一番良い肉を売ってる店や市場をチェックして島に上陸する。今日は目当ての店はあるのか?という俺の質問にたいして、エースは笑顔を浮かべながら、軽く、まぁな、と答えた。機嫌が良さそうなエースに、俺もなんだか気分が良くなる。
しかしまぁずいぶんと賑わっている。人は皆が明るく、気前が良い。でも来る時間が悪かったのか、0時を回るころになれば人もほとんど見れなくなっていた。裏道に行けば、俺達みたいな一般人からは少しはずれたようなもんが集まる酒屋なんかが騒がしくなっているんだろうが、表道の商店街はどんどん明かりが消えて行く。
『もうだいぶ暗くなって来たなー。俺達も裏行くか?』
何も灯りなんか持っていない俺は、完全に家々の明かりが消えてしまわぬ内に、まだまだ賑わっている裏路地に行かないかと、そう提案したが、エースは、んー、と曖昧な返事しか返さない。手にした肉も、いつもとは違って片手に収まる分しか買っていない。おかげで俺はただ隣を歩いているだけ。荷物を持たされることはなかった。
何をするでもなくただぶらぶらと街をあるく。馴染みある波の音が少し遠くに聞こえて、なんだか寂しくなった。
そんな時、不意にエースの右手が俺の左手に触れた。触れた、というか“ぶつかった”に近いくらい一瞬で。
「あ、わ、悪ぃ…」
慌てて謝ったエースがなんだか可愛くて、そのまま手を握ってやった。すると、奴は顔を真っ赤にして目を真ん丸にした。
俺、鳥目なんだわ。暗いとよく見えないから手引いてくれよ。笑ってそう言うと、エースは少しムスッとして、でもちゃんと手を握り返した。
恥ずかしがりやな君へ
(そんなエースの微表情まで見えている俺が、鳥目なわけがないんだけど。
)
fin
20110813
ツンデレエースウウウウアアアアア!!
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