小説(短編) | ナノ
いたずらな笑みに、KO負け(マルコ/ 男受主)




おれがマルコといる理由は、おれがマルコを好きで好きでたまらなくて、しかもマルコはおれを満足させることが出来るからだ。そうやっておれがマルコと一緒にいたい理由を考えると、どれだけ自分がマルコに溺れていて、依存しているのかがよく分かる。
じゃあ逆にマルコがおれといる理由は?今度はそんなことを自問自答の議題にあげてみた。おれは可愛くないし、マルコに比べたらだいぶ子どもだし、男前でもない。気配りができるわけでもなければ、協調性があるわけでもない。考えれば考えるほど、もやもやした黒とか群青とかいう寒色が、ぐるぐると心を支配した。
そうか、おれが分かるはずがない。おれはマルコじゃないもの。人の心が分かる能力なんて持ってなかったじゃないか。なんだ、そんな簡単なことにも気づかなかったのか。改めて自分がいかに頭が弱いかを思い知った。そうと分かればもうこれは直接尋ねる他ないだろう。





「マルコ、マルコ」





もうおれの部屋同然のマルコの部屋に入るのに、ノックなんか必要ない。中にはお気に入りの椅子に腰かけて分厚い本を読んでいるマルコがいた。おれに気付いたマルコはこちらにちらっと視線を向けると、再び本に視線を落としながら、なんだよい、と声を発した。
どうしておれを見てくれないんだ、と不満を爆発させながらベッドに座り、それから体を横に倒した。マルコの匂いがいっぱい染み込んだ枕に顔を埋めると、そのまんま枕から覗く片目でマルコを軽く睨む。おれを見てよ、どストレートに意見をぶつけると、マルコは読みかけのページにもうぼろぼろのしおりを挟み、本を机に置くと、腕を組んで背もたれに体重を任せ、じっとこちらを見た。そうやってちゃんとおれの意見を聞いて、反映してくれるところも、マルコの好きなところのひとつだ。そう思うと目の前でふんぞり返り、おれを見下げる男が改めてたまらなくいとおしくなって、思わず枕をぎゅーっと抱き締めた。目の前に本人がいるのに枕を抱き締めるだなんて、ちょっとおかしいな、なんて内心笑いながら、いよいよおれは本題に移ることにした。





『マルコがおれと一緒にいる理由ってなに?』





枕に顔を埋めたまま尋ねるが、マルコは腕を組んだままぴくりとも動かない。いったいどうしたんだろう。時間が止まってしまったみたいに、本当に動かないマルコを、おれも動かずにじっと見つめながら答えを待つ。でも、もしかしたら理由が見つからなくて困ってるんじゃないか、とか考えたら、この瞬間におれといる必要性を見いだせなくなったマルコにフラれるんじゃないかって、一気に不安になった。





沈黙に耐えられなくなったのはおれの方だった。思わず、マルコ、と小さい声で呼び掛けた。すると、大きなため息を吐いたマルコは、やっと椅子から立ち上がり、こちらに近付いてきた。距離がずんと縮まったことで、もうおれの心は期待と不安でどきどきだ。
恐る恐る、ちらちらと横目でマルコを見上げていると、不意に視界が大きく揺れた。
気が付いた時には、おれの両腕はがっちりベッドに固定されていて、からだの上にはマルコがまたがっていて。組み敷かれたんだ、とその時に、のろのろと動く脳みそが理解した。
それからはじーっとマルコに見つめられて、ちょっと恥ずかしいけどおれもマルコをじーっと見つめかえし、数分間、時が流れた。





なかなか返ってこない答えに痺れを切らし、もう一度、マルコがおれと一緒にいる理由ってなに?、と尋ねようとすると、唐突に唇を塞がれた。あんまりいきなりだったから、目も可愛くつむれなかったじゃないか。少し驚いてマルコを見上げた。すると、マルコはおれの髪をふわっと撫でると、やっと口を開いた。





「ファーストネームが好きだからっていうのじゃ、不十分かよい?」











いたずらな笑みに、KO負け





(じゃあもっともっとキスしてよ)(なら今度はちゃんと目瞑ってろい)




fin




20110812


マルコに甘やかされたい・・・!





[list][bkm]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -