小説(短編) | ナノ
よろしく、365日間(マルコ/男受主)








今年もわいわいと騒がしい甲板の上で年が明けた。暗い海も今日だけはなんだか不思議と明るく思える。年が明ける数時間前から始まった宴会だが、まだクルー達の勢いはおさまることを知らず、飲み潰れて眠ってしまっているのはたったの数人で、他の皆は下世話な話や世間話、愚痴なんかを肴に酒を飲んだり歌を歌ったり踊ったり。さすが飲み慣れている酒豪の海賊と言うべきか、酔いが回るのに一般人の倍ほど時間がかかるらしい。
ファーストネーム、ファーストネームと周りから何回も呼ばれて、その度にあっちこっちに引きずり回され、おれももうヘトヘトだ。エースを中心に盛り上がるお調子者の集団の中、おれは不意に船の柵の方に目を向けた。そこにいたのは目立つ金色。おれは騒がしい集団から離脱し、その金色の方に歩み寄った。



『マールコ』



一人でジョッキを傾けていたマルコの胸元に寄りかかって背中に腕を回す。エースはもういいのかよい、と尋ねながらおれの頭を撫でるマルコは、ふんわりと微笑んだ。マルコに会いたかったから来たんだよ、と甘えた声で言うと、マルコはやっぱりおれの頭を撫でながら微笑んでいて。今年のマルコも相変わらずかっこよくて余裕だなーと、改めて惚れ直す。
一口酒を煽ったマルコはおれの肩を掴んでくるっと反転させると、背中から俺の腰に手を回した。頭に顎を乗っけてぎゅっと体を引き寄せてくるマルコに、おれの頬も自然と緩む。良い感じにアルコールの回ってきたマルコはご機嫌な様子で、俺の耳元で、可愛いよい、だとか、 食っちまいてェよい、だとか普段人前では絶対に言わないようなことを言ってきた。こんなになるまで酔ってるマルコは珍しい。他のクルーの前でいちゃついたりするのなんか恥ずかしがってやるはずがないのに、酒の力はすごい。かといって、酔っているのかと尋ねると、んなわけねェ、と否定されてしまう。
座れよい、と命令されて、おれはおとなしくそれに従った。おれを足の間におさめて同じように座ったマルコは自分の隣にジョッキを置くと、満足そうに笑いながらおれを抱き締めた。



「ファーストネーム・・・今年もずっと俺のそばにいろよい」



急に真面目な声でそう言ったマルコは、おれの肩に回した腕に力を込めた。肩口に感じる熱い吐息が髪を揺らして、くすぐったい。おれが肩をすぼめながら、それはこっちの台詞だ、と小さく笑うと、マルコも同じように笑い、おれの頭をそっと撫でた。不安そうにおれの頭に額をくっつけるマルコ。こんな弱々しいマルコは見たことがない。
何をそんなに心配してるのか知らねェけど、おれはマルコ以外なんてありえねェから、ずっと側にいてやっから、安心しろよ。普段はマルコが言ってくれそうな心強くてかっこいい台詞だが、今日は交代でおれが言う番。おれの言葉にマルコはびっくりしたような顔をしたが、すぐにいつもの意地悪な笑みに戻って、ぐしゃぐしゃと乱暴におれの頭をかき混ぜた。



生意気言ってんじゃねェよい、ともうすっかり普段通りに戻ったマルコは、離してほしくて暴れるおれの体を腕ごとぎゅっと抱き締めて、頬にキスをした。マルコの醸し出す甘い雰囲気に負けたおれは、抵抗をやめてたくましい腕に抱かれ、その温もりを感じようと体重をマルコの胸に預けた。ファーストネーム、と柔らかい声色で名前を呼ばれ、ゆっくりと首を声のした方に回す。すると、マルコの眠たそうな瞳と目が合い、恥ずかしいのをまぎらわせるように、おれは小さなキスをした。
酒臭ェ、と愚痴をこぼすと、うるせェよい、と悪態をつきながら頬を擦り寄せられる。それに甘えておれも額をマルコに寄せると、何にも面白いことなんかないのに自然と笑みがこぼれた。



「今年もよろしくな」



『こちらこそ、よろしくお願いします』











よろしく、365日間



(はっぴーにゅーいやー!)









fin





20120106


ニューイヤー小説
新年早々、目立たない船のはしっこでいちゃいちゃしてるマルコと夢主くんでした(´ω`*
マルコは酔っぱらうとちょっと大胆になって、人前でもいちゃつけばいいwwww






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