小説(短編) | ナノ
*propensity?(マルコ/男受主)






どうしてこんなことになってるんだろう、なんて考えることは、もうとっくの昔にやめてしまった。“とっくの昔”っていうのはついさっきとかっていう程度のもんじゃなくて、もっと前、2年くらい前のことだ。それくらいに、もう考えることを諦めた。いくら考えても答えが見つかりそうになかったからだ。
ファーストネームとは2年間連れ添ってきたもんだからだいたいのことは分かるが、これだけは理解しがたい。どれだけ考えても、やっぱりよく分からないのだ。




『・・・おれ、ここすっげー好き』




先程から俺の股の間で一人興奮して勝手に性器に奉仕している彼は、その先端、亀頭を指先でいとおしそうにつんつんとつつくと、そりゃあもうむちゃくちゃ気持ち悪い恍惚とした表情で、そこばかりを楽しそうにじっと眺めた。これがファーストネームの性癖というか、フェチなのだ。自分もおんなじのがついてるんだから、自分のを眺めろと言うのだがファーストネームは、マルコのがいいんだ、といつも俺のを眺める。毎回毎回被害にあう俺の気持ちにもなってほしい。
さらにファーストネームの感性はちょっと一般人のそれからズレていて。




『かっわいー・・・』




「・・・・」




やっぱりおかしい。どうしてこんなグロテスクなものを可愛いと感じるのだろうか。いったいどんな脳みそをしているんだ、と尋ねたいくらい、こいつの感覚は狂っていた。
ぷにぷにと指の腹でその弾力を確かめるように亀頭を何度もつまむと、顔に軽くすり付け、すんすんと匂いを嗅ぐ。それからまた舐めるようにそれを凝視すると、楽しそうに笑う。もうただの変態だ。でも、ファーストネームも楽しそうにしてるし別にいいかな、なんて思ってしまう自分もだいぶと感覚的なものが狂ってきているのだろう。




『舐めていい?』




自分で勝手に欲情して、勝手にズボンとパンツをずらして、勝手に俺のを取り出して、勝手に亀頭で遊んでいた奴が、どうしてかいつも、フェラのときだけは俺に許可をとる。わざわざ後から尋ねるなら最初からそうしろと言うのだが、ファーストネーム曰く、亀頭を眺めたり触ったりするのはおれがしたいことだからマルコの意思は関係ないけど、フェラはマルコが感じないと意味ないから、マルコもその気じゃなきゃ駄目なんだ、だそうだ。まあ確かに一理ある。その気じゃないのにヤられても、たぶん勃たない。




俺の答えも待たずにファーストネームはわっかにした指をゆるゆると上下に動かし始めた。亀頭のあたりのくびれにその指をぴったりと合わせ、手首を回して刺激されれば、急性な強い刺激に俺の腰は意思とは反してビクリと跳ねる。してやったり、という顔で上目でこちらを見たファーストネームに、羞恥が込み上げた。それを隠すため、俺はファーストネームの髪を掴むと強引に引き寄せ、指を突っ込んで口を開かせると、そこに性器を押し込んだ。




「ほら、欲しかったんだろい」




しっかり舐めろ、このド変態。ファーストネームは自分がヤられているわけでもないのに俺の吐いた暴言に感じているようで、ぶるりと体を震わせると、俺のズボンを掴み、自ら頭を動かした。じゅぽじゅぽとどこのAVで覚えたのか知らないが、この間まで知らなかったテクニックを身につけていやがったファーストネームのフェラは、悔しいがちょっと気持ちいい。しかも、精一杯奉仕する姿は俺の心をがっしりと掴んでいるわけで。





『んっ・・・イイ?』




「・・・よい」




気持ちいいかと尋ねてくるこのどや顔も、そんなイチモツをくわえて言ったりなんかしたらエロさしか残らない。黙って相づちをうつと、それから口を離したファーストネームは、舌で唇についた先走りを舐めとると、大好きだという亀頭にキスをした。最中の亀頭が男にとってどれだけ敏感か知っている奴がこうやって弱いところを責めるのはズルいと思うが、まあ俺をフェラだけでイかせようとする試み自体が結構至難の技だったりするから、多目に見てやろう。



キスを繰り返しながらも右手は口に含みきれない部分を扱いていて、絶え間なくいやらしい音が部屋に響いた。
固くした舌の先端を亀頭の割れ目に沿わし、何回も往復させる。それから尿道口から溢れてきた透明の先走りをゆるく吸うと、口にたまった唾とともにそれを飲み下したファーストネームは、まるでジュースか何かを飲んだ後のように、はぁっとため息を吐いた。濡れている口元を手の甲でぐいっと拭い、相変わらず右手で俺のを触りながら、上目でこちらを見上げた。




『なんかエロいこと言ってよ』




ニヤリと吊り上げられた口角は、こいつのいやらしさとか変態なところとか、そんな内面的なところを全部暗に示していて。それと、ファーストネームが実はマゾヒストだってことも。俺がファーストネームの柔らかい髪をそっとすくと、彼は挑発的な視線はそのままに、気持ち良さそうに頭を押し付けてきた。負けじとこちらも挑発的に見下げると、あからさまに興奮したように息を吐いたファーストネーム。正真正銘のビッチだな、と納得がいったところで、俺もちょっとSっけを出してみる。




「どこが好きか言ってみろよい」




ファーストネームはうっとりした表情で撫でられる気持ちよさに目を細目ながら、俺のものに視線を戻し、おれね、このさきっちょが大好きなの、と答えた。それから、このつるつるしたところとかちょっとグロテスクなところとか、あと擦ったら精液が出てくるところもすき。そうつらつらと述べたファーストネームは、指先で先走りを絡めながら亀頭の湾曲した表面をなぞった。見ると、ファーストネームの下半身もズボンを押し上げてかなり主張している。きっとパンツはかえないともうベタベタなんだろうなぁ、と考えながら、俺は足でファーストネームのものをつついた。すると声をつまらせて体をびくん、と震わせたファーストネームは、もっとやってと言わんばかりの視線をこちらに向けた。




「足でヤられて興奮するのかよい」




後に、変態、と付け足すと、嬉しそうにへにゃりと笑ったファーストネームは、俺の太ももに頭をもたれさせると、舌先でちろちろと裏筋を舐めた。それから自分のも左手でズボンの上からゆるゆると擦り始めたファーストネームは、恍惚とした表情のまま、亀頭を指で擦った。
シてほしいなら言えよい。うじうじとして亀頭をいじっているファーストネームに意地悪をしてそう言うと、少し顔を赤らめた彼は、恥ずかしそうにはにかみ、おれの亀頭もいじめて、とぼそぼそとゆっくり口にした。
俺はファーストネームを担ぎ上げると、そのままベッドに倒れ込み、月明かりの差し込む小さな窓のカーテンを閉めた。









propensity?



(おれもいっぱい出すから、マルコも出してよ)








fin





20111017


こういうのが大丈夫というかむしろ好きな人はまりあと友達←





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