小説(短編) | ナノ
赤い首輪(マルコ/男受主)









『見て!今日のお洋服は新品なんだよ!』



眼下の甲板でむさ苦し船員たちに囲まれてくるくると回り、フリルをひらひらと潮風にたなびかせているのは、うちの隊員でも特に特殊な奴だ。小柄で華奢で、女みたいな仕草と声と格好の少年、ファーストネームは、間違っても女なんかじゃない。数年前までは俺たちと一緒になって戦場に飛び込んでいったような、れっきとした男だ。そしてなにより、俺の恋人だ。
一般的に男同士のカップルだと、掘る方をタチ、掘られる方をネコなんて言ったりするようだが、俺たちの場合は、彼氏彼女でも全然通用するだろう。



「よう、マルコ!相変わらずお前の彼女は可愛いな!」



ついさっきまで甲板の輪の中でガキみたいにファーストネームのスカートをめくり上げようとしていたエースがやってきて、俺に肩を並べた。ちょっと味見させてくれよ、と舌なめずりをした黒の癖っ毛をぐーで殴ると、エースは、何も本気で殴ることはねェだろ!と怒鳴った。茶化すお前が悪い、と頭をさするエースに向かって年甲斐もなく少しだけ舌を突き出すと、きめェ、と言われた。



「そんなにファーストネームが好きならああやって無防備なの注意すればいいじゃねェか」



そう言ってエースが指差す方向にはやっぱりファーストネームがいて、持ち前の身体能力を駆使し、バクテンやら側転やらを交えておいかけっこをしている。おーにさーんこーちら!と可愛らしい声がしたと思うと、物陰から飛び出した別の船員がファーストネームを掴もうとする。それをやすやすとかわしたファーストネームは、きゃっきゃと笑いながら甲板を走り回った。



「ファーストネームが楽しんでるんならいいんじゃねェか」



あいつの無邪気な笑顔やじゃじゃ馬的性格には俺だけじゃなく、皆が癒されている。ファーストネームの行動を制限することは、例えるならば家族のペットを自分だけのものと限定するようなもんだ。まあ確かに、俺以外の野郎にあの愛くるしい笑顔を向けていることはちょっと気にかかるが。
エースは、欲のねぇやつ、とため息を吐くと、手すりの上に飛び乗った。



それじゃあ俺もまたちょっかい出してくっかな!と意気込んだエースは、トレードマークのオレンジのハットを浮かないように片手で押さえ、甲板へと飛び降りた。まったく元気な奴等だ。エースは甲板に降り立つとまたファーストネームのスカートを捲りあげようと奮闘しているが、今度こそは回りの連中に阻止され、締め上げられてしまった。



さっき、ファーストネームは皆の癒しだから行動を制限してやることは出来ない、と言ったが、あれだけの男たちに囲まれてセクハラじみたことをされてるファーストネームをあからさまに守ろうとかしないのは、他にもちゃんとわけがあるわけで。
さんざん走り回っていたファーストネームとクルーたちは、肩で息をしながら甲板に座り込んだ。朝から汗だくの野郎共はむちゃくちゃ暑苦しい。そして俺はそんな男たちを涼しい顔で上から見下ろしているわけで。



しばらくして再び甲板に現れたファーストネーム。もちろんファーストネームも同じように汗だくで、頬に張り付いた柔らかい髪を指先で払うと、手でパタパタと顔を扇いだ。あっつー、と苦しそうに一言もらすと、羽織っていた薄いピンクのパーカーのジッパーをはずした。肩からパーカーが落ち、白い肌が日にさらされる。すると、回りでファーストネームの行動にみとれていた男たちの数人が顔を赤くした。



「俺が自分のペット放し飼いにするわけねェだろうがよい」



ファーストネームの白くて細い首筋には、赤い痕がいくつか散りばめられている。それを知っていて特に気にしないファーストネームもどうかと思うが、どっちにしろファーストネームは俺の所有物だということを証明するためにはちょうどいい。
そう、華奢で白くて癒し系で、こんな可愛い奴、俺が放し飼いにするわけがないのだ。きちんと名札つきの首輪をつけておいてやらないと。血統書つきの良い犬はいつ誰に盗られるかわからないから。












赤い首輪



(ファーストネーム)(何?マルコ!)
(呼び戻しの躾も完璧)







fin





20110930


男の娘って本当に可愛いと思います!ショタだと特に!←
ただのまりあの性癖公開でした(・∀・)






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