小説(短編) | ナノ
5年目の初恋(シャンクス/ 男受主)









寂しいときとか、悲しいときとか、心が寒いときとか、心が痛いときとか。そういうときに黙って側にいてやれるのが恋人だって。そう、誰かが言ってた気がする。どんな慰めや励ましの気のきいた言葉よりも効力をもつものは、恋人の存在であり、温もりであり、無言の優しさである、と。理由も聞かないで、ただ隣にいるだけでいいんだそうだ。だからおれはこうしてお頭の隣にいるんだよ。
そう言ったファーストネームは表情ひとつ変えず、俺の隣でじっと水平線を見つめ続けていた。



「お前はこんな酷い男の恋人なのか?」



町で見かけた綺麗な若いお姉さんを口説いたらビンタされて、テンションが急激に下がって、酒も飲まずに誰よりも先に船に帰ってきたような男だ。それなのにファーストネームは、それでもお頭が好きなんだ、と笑っていた。



ファーストネームの俺への片想いは長い。ファーストネームが仲間になったのは5年前。その頃は確かまだ彼は13、14くらいだったか。幼い頃は“一番なついている人”というレッテルを貼り付ければ男だろうが女だろうが、そこに恋愛感情なんかあってもなくても分からない。が、思春期を越えれば女の体に興味を持ったりするもんだ。しかし、ファーストネームはいくつになっても俺が好きだった。ファーストネームが年を取れば俺も年を取る。彼は“成長”でも、俺はもう年齢的に“老い”だ。それでもファーストネームは俺の後をついて回った。



「なあ、ファーストネームはどうしてそんなに俺が好きなんだ?」



確かに四皇と呼ばれるだけの実力があるのは自他共に認めていることだけあって、強いかもしれない。でも、ルックスならベンの方がいいだろうし、性格も良いとは思ってない。自分で言うのもなんだが、ちゃらんぽらんだし、酒が大好きだし、今日みたいに女も好きだ。これからどんどん体も力も衰退していくであろう、こんな俺の、どこがファーストネームを引き寄せているのか。
ファーストネームは、なに言ってるんだよ、と小さく笑うと、潮風にかき回される髪を片手で押さえると、後ろに撫でた。その仕草が男のくせに妙に色っぽくて、思わず見とれてしまった。



『おれはずっと前から“シャンクス”っていう人間が好きなんだ』



馬鹿で、どっか抜けてて、溺れるくらい酒が大好きで、ベンや皆がいないと何にもできなくて、お人好しで、仲間思いで、優しくて、強くて、かっこよくて。そんな、お頭の全部が好きなんだよ。



ああ、どうして俺は今まで5年間もこいつの想いに気付かなかったんだろう。ファーストネームが俺に向ける想いはむちゃくちゃ控えめだけど、俺が思うよりもうんと大きいものだった。ファーストネームが俺よりもずいぶん年下なのにどこか大人びてて、いつも背伸びしていたのは、早く俺の隣にふさわしい大人になりたかったからなのかもしれない。
今となっては年の差なんか、性別の壁なんか関係ない。



「なあファーストネーム、俺の恋人になってみないか?」



目を丸くしてこちらを勢いよく振り返ったファーストネームは、口を開けっ放しにして、ぱちぱちと何度もまばたきをした。突然の告白に驚くファーストネームの髪をそっと撫でると、小さな体はぴくんと震えた。今までずっと片想いをしてきたファーストネームは、かなりうぶなようだ。顔を赤くして目線を下に反らしたファーストネームがあまりにも可愛くて、額や瞼、頬や鼻、と、顔中にキスを降らせた。最後に数秒間、ピンクの唇に口付けると、俺はファーストネームを腕の中に納めた。俺の恋人になってくれないか。二度目の告白に、ファーストネームは小さく頷いた。



『・・・夢みたいだ』



ファーストネームは腕の中でうっとりとした表情のまま、俺のシャツをゆっくりと握った。
ファーストネームが最も望む、妄想しかしたことのないような恋愛を、俺がさせてやろうじゃないか。この5年間の苦しい片想いを帳消しにするくらい、熱くて濃い、大人の恋愛を。










5年目の初恋



(これからはお頭じゃなくて、名前で呼ぶんだぞ)(うん・・・!シャンクス!)







fin





20110927


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お茶目なシャンクスも真面目なシャンクスも全部が好きです!






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