小説(短編) | ナノ
違和感が快感(マルコ/男受主)








モビーディック号は夏島から秋島へと航路を進み、吹く風は冷たく、景色も気候も秋めいてきた今日このごろ。昼と朝夕の寒暖差が免疫力の弱った体に堪え、おれは風邪をひいてしまった。どうも鼻の奥のあたりが痛いというか、違和感があったのが昨日。今朝起きてみれば鼻がつまって息苦しく、どうも体が思い。熱はないようだが、声も少しだけ掠れているし、これは寝冷えによる風邪だろうか。船員たちにうつしてはいけないということで、ナースにもらったマスクを着用して過ごすことにした。



風邪なんかめったにひかないもんで、慣れないマスクはやはり息がつまるような感じがする。すれ違う度に船員たちも声をかけてくれて、結局情けない掠れた鼻声を笑われるのだが。昼食の後に飲むようにとナースから処方された錠剤をポケットにつっこみ、おれは甲板に向かった。陽をあびたらこの気だるさもとれるような気がしたからだ。



「ファーストネーム」



不意に後ろから聞きなれた声に名前を呼ばれ、振り替える。おれの顔を見るなり目を丸くしたマルコに、おはよう、と挨拶をした。その声はやはり鼻にかかって掠れていて、自分でもかなり違和感がある。眉間にしわをよせたマルコに、風邪か?と尋ねられ、声を出すのも億劫なので、軽く頷く。つぎに、熱は?頭が痛いのか?などと尋ねられたが、ぜんぶ首を縦か横に振るだけで答えた。



「喉が痛いのか?」



あんまりおれが喋ろうとしないもんだからと勘違いをしたらしいマルコは顔をしかめて尋ねたが、おれはそれに対しては、別にそんなわけじゃねぇけど、と言葉で答えた。すると、どういうわけかマルコの動きが一瞬止まり、その後急に腕を強く引かれた。力が入らない体をぐいぐいと引かれ、たどり着いたのはマルコの部屋。部屋に押し込まれたおれは、ゆっくりとベッドに押し倒された。



『ちょ、マルコ、』



マルコはおれに覆い被さると、マスクをはずし、シャツの中に手を入れて素肌を撫でながら、おれの一番弱いところ、耳を舐めた。風邪のせいかマルコのせいか、徐々に体温は上がっていき、顔に熱が集まるのが分かる。耳の穴に舌を突っ込まれたりしたらもう、腰の辺りから脳天に向けてぞくぞくっていう快感が走り抜けて、下半身にも熱が集まってしまう。
でもさすがに風邪をひいている今の状態でセックスをして楽しめる自信がないため、おれは声を上げないように歯をくいしばりながら、マルコの肩をゆるく押し返した。それから、いきなりどうしたんだ、と尋ねると、マルコは耳元に唇を寄せたまま、小さく囁いた。



「その声、クソエロい」



名前を呼べ、と言われて、困惑しながらも、マルコ、と言われた通りに名前を呼んだ。マルコは従順なおれを、誘ってんのかよい、と耳元で小さく笑うと、髪をゆるく掴んだ。名前を呼べって言ったのはマルコだろ。反抗するための言葉は急な激しいキスに飲み込まれてしまった。おれの右手に左手をのせて指を絡め、反対の手では耳をぐにぐにと触りながら舌を差し入れてくる激しいキスに、おれは思わず声をあげた。体をよじると、それを許さないマルコの体がさらに密着してきて、動きを封じられた。



『んっ・・・マル、・・・んぅ・・・』



鼻がつまってうまく息が出来ないおれはだらしなく口を開けたまま、マルコのキスを受け止めることしか出来なかった。
やがてキスが止んだ時には息はすっかり上がっていて、50メートルをダッシュで走った後みたいに苦しかった。お互いの涎でべとべとになった口元を手の甲で拭いながら、おれはマルコを睨んだ。そんな潤んだ目で見つめられたら歯止めが効かなくなる、そう言うマルコは、舌で唇を一度だけぺろっと舐めるとふて腐れたおれを見て、からかって悪かったよい、と笑った。









違和感が快感



(でももう一回だけ名前呼べよい)(やっぱり変態だ!)






fin





20110925


やっぱりマルコにはぐいぐい攻められたいと思います
そして久々にひいた風邪は辛いですorz






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