小説(短編) | ナノ
ご予約承りました(マルコ/ 男受主)






*学パロ






季節は冬。
あと一週間でクリスマスということで街も人も皆が浮き足立ち、専門店が立ち並ぶ街道はカップルや親子が闊歩している。どの店からも明るいクリスマスソングが聞こえ、可愛らしい雑貨やお菓子、洋服や玩具がディスプレイされている。街路樹はどれもLEDのイルミネーションで派手に飾られていて、キラキラと街を照らしている。



この25日、つまりイヴは俺がファーストネームと付き合って半年になる記念日だ。何かあいつが喜ぶようなものをプレゼントしてやりたいと考えてはいるのだが、なんせ受験生の俺は、ゆっくりプレゼントを選んでいる暇なんてない。試験本番まであと僅か。どうしたものか。



『何考えてんだよ』



魅力的な街並みを見つめながら歩いていると、隣を歩いているファーストネームに肩をぶつけられた。はっとして、悪い、とファーストネームの方に意識を戻すと、たまにしか会えねェんだからちゃんとおれのこと見ろよな、と怒られてしまった。
学校に来ている日は塾と学校の往復の生活をしているおかげで、ファーストネームとは滅多にあえないような日が続いている。



本当は手を繋いで街を歩いたり、公園のベンチで肩を寄せあって穏やかに流れる夜の時間を二人で過ごしたい。しかし世間体とは厄介なもので、女の子が手を繋いで歩いていてもただの仲良しなのに、男が手を繋いで歩いていたらもうその時点でそいつらは特殊、変な奴らだと軽蔑されてしまう。人に流されない性格の俺でも、世間体から自分たちを守るためにはおおっぴらにカップルらしいことが出来ないのが事実である。
だからこそクリスマスくらい・・・。そう思うのだ。



以前から欲しがっていた新しい白のマフラー。お揃いのよくわからないキャラクターのキーホルダー。無難なデザインのカットソー。部活も頑張っているファーストネームには食べ物でも喜ぶかもしれない。
いろいろ考えてはみるものの、やはりこれといった物は思い浮かばない。こうなればいくら悩んでも同じだ。俺はそう考え、ファーストネームに直接尋ねることを決意した。
隣を歩くファーストネームを見やると、よい、と呼び掛けた。



「クリスマスプレゼントは何がいい?」



ガキなファーストネームのことならやっぱり中身の分からないサプライズでプレゼントされた方が嬉しかっただろうかと考えたりもしたが、精神的な余裕もないことだし。ファーストネームはこちらを見ると、店のショーウィンドウをあちこち見回して唸った。そりゃあいきなり尋ねられたら誰でも考え込んでしまうか。一瞬、ブランドの時計とかとんでもない額のものをねだられたらどうしようと想像してヒヤッとした。



ファーストネームは不意にケータイを取り出すと、なにやら画面を操作し始めた。なるほど、ネットで欲しいものがあるのかと納得した俺は、ネットならば忙しい俺でもまともな買い物が出来るなと安心した。さて、可愛い可愛い俺の恋人はいったい何が欲しいのか。お揃いのマグカップとか言われたら勢いで同棲してしまいそうだ、なんて馬鹿なことを考えながら、ファーストネームのケータイの画面を覗き込むと、淡い光を放つ液晶に表示されていたのはスケジュールだった。まさかクリスマス当日にデートしろだなんて無茶を言うんじゃないだろうな、と再び嫌な考えが頭をよぎった。一時間でも惜しいというのに、一日勉強できないだなんて、気がどうにかなりそうだ。



とりあえず今年のクリスマスはデートしてやれないことを伝えなければ、とファーストネームに声をかけようとすると、それよりも先にスケジュールは閉じられ、画面はシンプルな待ち受けに戻された。それでもファーストネームの気持ちが固まる前に、と焦る俺が息を吸うと、吐き出すよりも早くファーストネームが口を開いた。マルコ、と可愛い声で呼ばれれば、はい、としか返事ができない。急く気持ちを悟られないように俺が軽く返事を返すと、ファーストネームは俺の袖を引っ張って耳を貸せと言った。
やっぱり可愛いなあと思いながら、俺は立ち止まり、体をファーストネームの方に傾けた。やがて肩に触れた小さな手と僅かな重み、それからくすぐったくなるような小さな声。ざわざわと騒がしい人混みの中でその声を聞き逃さないように、俺はしっかりとファーストネームの声に耳を傾けた。



『クリスマスプレゼントはちゅーがいい』











ご予約承りました



(ファーストキスのご予約、承りました!)








fin




20110919


今からクリスマスのことを結構本気で考えてますまりあです←
マルコからのプレゼントならなんでも嬉しいですよね!小躍りしちゃうよ!






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