小説(短編) | ナノ
子うさぎ(シャンクス/ 男受主)








『おれはうさぎなんだよ』



唐突にそう言い出したファーストネームは、ベッドでごろごろと世話しなく寝返りをうちながら指を丸めてぐーをつくり、顔の横でひょこひょこと動かした。どっちかというとそれはネコじゃないかと思いながらも、ずっと真似を続けている恋人が可愛くて仕方がない俺は、しょうじきこいつにベタ惚れだ。40近い俺がまだ10代のファーストネームに釣り合うだなんて思ってはいないけど、可愛いんだからしょうがない。



「うさぎは何が好きなんだ?」



ファーストネームのうさぎごっこに付き合ってやることにした俺は、相変わらずごろごろと寝返りをうちながらシーツをぐしゃぐしゃに崩していく子うさぎを見ながら、近くの椅子に腰かけた。うーん、とうさぎが好きなものを考えるファーストネームの声に混じり、ギシッと椅子が軋む音が聞こえた。この椅子ももうそろそろ寿命か、と感傷に浸りながら、長年連れ添ってきたぼろぼろの椅子の肘置きを撫でる。
布のすれる音が聞こえなくなったのに気付き、ふと顔をあげると、こちらをじっと見るファーストネームと目があった。



『シャンクスはその椅子が好きなのか?』



一瞬理解できなかったが、すぐにファーストネームは俺の好きなものの話をしているんだと分かった。少しむすっとしたファーストネームが面白くて、そうだなあ、と答えをはぐらかしてからかった。予想通り眉間にシワを寄せたファーストネームは、黙り込んで視線を床に落としてしまった。何か対抗策を練っているらしい。
しばらくじっと口を真一文字に結んでいたファーストネームは、数分後、ようやく口を開いた。今回は結構長時間シンキングタイムがあったからきっとそれなりの答えが返ってくるだろう。おれはベンが好きだ、とかヤソップが好きだ、とか。しかしそんな俺の予想は大きく外れ、ファーストネームからは、うさぎはにんじんが一番好きなんだ、との言葉が返ってきた。シャンクスよりももっとにんじんが好きなんだ、と声を張ったファーストネームはベッドから跳ね起きると、俺の膝に飛び乗り、首筋に顔を埋めてきた。



「それじゃあ俺が一番大好きって言ってるようなもんじゃないか」



笑いながら矛盾を指摘してやると、すっかり機嫌を損ねてしまったファーストネームは、うるさい、と言って一度だけ俺の胸板をぐーで叩いた。こうやって拗ねてるのに下手くそに甘えてくるファーストネームが可愛くてしょうがない。口元が自然と緩んでしまうのを隠しもせず、俺はファーストネームの柔らかい髪を何度も撫でた。



「知ってるぞ、うさぎは淋しいと死ぬんだろ?」



本当に伝えたかったことはきっとこれなんだろう。淋しいと死ぬからずっとそばにいろ、と。じゃあもうファーストネームは一生俺から離れられないな、と性懲りもなくまたからかってやると、シャンクスもおれから離れられないくせに、と言い返された。
まったく、その通りだよ。ファーストネームがいなきゃ、どんなにわくわくする冒険だって楽しくない。ファーストネームがいるから、俺の人生はこんなにカラフルに色付いているんだ。



どんなにわがままでも、口が悪くても、態度が悪くても、しつけがなってなくても、俺はこの子うさぎを一生可愛がっていくんだろうなあ、と想像して、なんだか滑稽だけど幸せな未来に、楽しみが増えたように思えた。










子うさぎ



(でも知ってるか?うさぎは万年発情期なんだ)(それはシャンクスだ)







fin






20110912


シャンクスに思いっきり甘えたいぜコノヤローーー!






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