小説(短編) | ナノ
泣き虫バンビちゃん(エース/男攻主)



心理テスト。ちょうど俺たちが小学生くらいに異常なブームを起こしたアレだ。特に女子はそういうのに敏感で、よく出題されたりしたもんだ。あんまり根拠のない答えでわいわいと盛り上がり、似たようなテストを何回も実施し、そしてまた盛り上がる。馬鹿の一つ覚えみたいにそんなことに夢中になって、ませたガキはそれで人の恋愛観とか、相性チェックなんかもやってたっけ。
ケータイの画面を見つめながら、そんな懐かしいことを思い出していた。今ケータイに表示されているのは、まさにそれ、心理テストである。有料会員登録すればテストできるものも増えるらしいが、無料でできるものもそこそこある。久しぶりにみた心理テストに内心少しわくわくし、隣で音楽を聞くエースに試してやろうと思った。





『エース』





名前を呼んでやるが、イヤホンを両耳につっこんで周りにシャカシャカと音が漏れるくらい爆音で音楽を流しながら、目線は机に雑に広げられたジャンプを追うエースは、俺の呼び掛けには答えなかった。それどころか、足先はシャカシャカという音と共にリズムよく床を叩いている。少しムッとして両耳のイヤホンのコードを引っ張って、引っこ抜いてやった。むちゃくちゃ驚いた様子のエースは、目をまんまるくして、何事かと俺を見た。
俺が、さっきから呼んでたんだよ、と文句を言うと、エースは少しだけ目を泳がせて悪い、と言うと、iPodの電源を切った。
やっと話を聞く体勢になったエースに、俺は心理テストを始めた。





――あなたは森を歩いています。途中で、森の動物に出会いました。それは次のうちのどれ?



1.くま
2.うさぎ
3.りす
4.しか





問題文を読み終えると、なんだそれ、と言わんばかりの痛い視線が俺に突き刺さった。ほら、早く答えをよこせ。そう言って睨み返すと、エースは思いの外真剣に試行錯誤しはじめた。これはそんな真剣に考えて答えるべきもんじゃない。直感だよ直感。コメカミ辺りをこんこんと指先で軽く叩きながら説いてやると、エースはそうか、と納得して、考えるのをやめた。





「しか」





エースの答えを聞き、俺は“しか”にカーソルを合わせてページを進めた。しばらく待つと、ローディングされたページには、かわいらしいしかのイラストと、診断結果が現れた。
まず太字で書かれていたのは、“アナタは…バンビちゃんタイプ”の可愛らしい言葉だった。エースがバンビちゃんだという診断結果に思わず吹き出しそうになったのをこらえ、本文に目を移す。








――バンビちゃんタイプのアナタは、意外と寂しがり屋さん。突発的な行動力と、みんなを元気にする明るい部分の反面、誰かとずっと一緒にいたいと思う可愛い一面も持ってるよ☆強がってるけど案外泣き虫…。そんなアナタをしっかりと支えてくれる、お兄ちゃんタイプのしっかりものとの相性がバツグン!たまには人を頼って、甘えてみたら?――








今度は吹き出してしまった。あまりにも的を得た結果に、そうか、俺がお兄ちゃんタイプのしっかりものなのか!と、少しだけ自惚れも出てきた。エースはというと、こんなの嘘だ!俺じゃねえ!と、顔を真っ赤にして俺からケータイを取り上げ、さっき俺が読み上げた文章を自分でも読み返している。
やっと笑いが落ち着き、エースからケータイが帰ってきた。
だいたいこんな心理テストなんかどこの誰かもわかんねぇ奴が、自分の価値観で勝手に作ってんだろ!?と文句をつらつらと並べるエース。だが残念。これは心理学の専門家監修だ。まあこの事実は黙っておいてやろう。たぶん神経を逆撫でする。
俺は、ぷんすかと怒り、再びジャンプに目線を落としたエースに手をのばし、その横髪をかきあげた。ふとこちらを見上げた真っ黒の瞳と、ばっちり目が合う。柔らかく笑って、髪を触る手を下に移動させ、頬を撫で、指先で唇をなぞった。





『俺が泣き虫なエースの側で、ずーっと一緒にいてやっから』










泣き虫バンビちゃん




(ちなみに誕生日で見る俺たちの相性は、96%らしい)(じゃあもう離れられねぇな、俺たち)







fin


20110810


強がってもどこか弱っちいエースは可愛くていいと思うんだ!





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