小説(短編) | ナノ
人生プレビュー(シャンクス/ 男受主)
おれが赤髪海賊団の船に乗ったのは、つい最近、たった1ヶ月ほど前だ。あれは酷かった。シャンクスさんの強い勧誘には、“行きます”しか答えが用意されていなかった。今あの時の話をシャンクスさんにすると、最終的に“行きたい”って言ったのはファーストネームだろ?と笑い飛ばされる。まあ別にここに来たことを後悔しているわけではないから構わないのだが。
ここの人はみんな良い人ばかりだ。荒くれ者のくせに結構繊細で、よく気がつく。仲間思いのお頭思い。どこか抜けてるシャンクスさんも、こんな立派な副船長や乗組員がいれば、これから先も安心だ。きっとあの人は一人じゃ何もできないんだろうなあ、と考えては、おかしくて何度も笑ってしまった。
「俺のこと考えてるのか?」
『わっ・・・!!』
唐突に背後から耳元でシャンクスさんに喋りかけられて、驚いて座っていた船縁から甲板の方にひっくり返ってしまった。背中から固い丈夫な木の板にダイブしたおれは、ゆっくりと体を起こして背中をさすりながら、おれの目の前にしゃがみこむシャンクスさんを睨んだ。大丈夫か?と笑いながら尋ねるシャンクスさんに、心配なら落ちないように受け止めてくれればいいじゃないですか!と叫ぶ。
「仕方がないじゃないか!急に落ちたファーストネームが悪い!」
『そんなあ!』
酷いです!と目に浮かんだ涙が溢れ落ちないように歯を食い縛りながら言うと、周りから乗組員たちの笑い声が聞こえてきた。仲良いな、と微笑むみんなに、シャンクスさんも笑い返す。
不意にシャンクスさんが右手をおれに回したかと思うと、そのまま体が宙に浮いた。慌ててシャンクスさんの服にしがみつくと、顔のすぐ近くにある口元から、大丈夫だ、と笑い混じりの声がした。
服越しの温度とか、目の前にある日焼けした肌とか、深い赤の髪とか、おれを抱き上げている逞しい右腕とか、いろんなことにドキドキしながら、どうしたんですか?となるべく平常を装って尋ねる。焦ってるのがバレたら恥ずかしい。
シャンクスさんはそのまま歩いて船頭まで来ると、少しだけ顔をこちらに向け、あとは目線だけを寄越した。
「ファーストネームは、ここに来たことを後悔してるか?」
シャンクスさんの質問に大きく首を横に振ると、おれは、そんなわけないです!ここはすごく楽しいし、みんな親切ですし!と理由まで説明した。すると、シャンクスさんは安心したように微笑み、そうか、と付け足した。
それから、ファーストネームを元居た島から頂戴したのは俺だ、だから、とそこまで言うと、おれにいたずらな笑みを向けた。
「ファーストネームには最高に楽しい人生を約束してやる!」
人生プレビュー
(おれの最高に楽しい人生が見えた)
fin
20110824
初シャンクス夢でした
かっこいいシャンクスも、おちゃらけたシャンクスも、どんなシャンクスも好きです!
結局はおっさんが大好物のまりあなのでした←
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