小説(短編) | ナノ
*愛情の塊(マルコ/男受主)








ゴンッと鈍い音が部屋中に響き、そして脳内を反響した。強く頭を壁に打ち付けたおれは、力なくそのままずるずると床に座り込んだ。ガンガンと、少し揺れるだけで痛みが重複する頭の患部を片手で押さえつつ、ゆっくりと近付いてくるマルコを見上げた。



「エースの後は追いかけ回すなってあれほど言っただろい、なァ」



そう言いながらおれの目の前にしゃがみこんだマルコは、おれの髪を強く掴んだ。
エースとは友達、いや、兄弟みたいな関係だ。おれが船に乗った時からずっと、おれを弟みたいに可愛がってくれてる。そう、やましい関係なんかじゃないんだ。
髪を掴んだまま軽く揺さぶられておれが苦痛に表情を歪めると、マルコは満足そうに笑って、まるで投げ捨てるようにおれから手を離した。勢いに任せて床に横になろうとおれが全身の力を抜いた時、腕を掴まれ、強引に立たされた。



『痛いよっ・・・マルコ・・・』



今まで殴られてきてすでに血が滲む口元とか口内とか、さっきぶつけた頭とか、今掴まれている腕とか、全身が痛くて、マルコにそれを訴えた。でもおれは知ってるんだ。こうなってるマルコがおれの意見なんか聞いてくれないことくらい。
マルコは、今にも崩れ落ちそうなおれの膝の間に自らの足を差し込んでおれの体を支えると、うるせぇ、とおれの顎を掴んで、うつむこうとするおれの顔をぐいっと持ち上げる。



「ファーストネームは俺じゃなきゃ駄目なんだろい?」



耳元でそう言われ、おれは素直に、マルコじゃなきゃ駄目、と答える。
本当に、どんな酷いことをされても、叩かれても蹴られても、マルコ以外なんかありえないんだ。だからお願い、嫌いにならないで。
いつのまにかぽろぽろとあふれていた涙が頬を伝う。思わず口から出た言葉は、まぎれもなくおれの本音で。
涙を拭うようにまぶたをべろっと舐めて、それからキスをしてくれたマルコは、切れてじんじんと痛む唇の傷口を、何度も執拗に舐めた。時折抉るように舌で与えられる刺激に、いつしかおれの体は歓喜の声をあげるようになっていた。



『はっ、ぁ・・・マルコ・・・』



熱を帯びた体がもどかしくて、思わず自分からマルコに手を伸ばす。腰に回そうと浮かせた手は掴まれ、無情にも冷たい木の壁に押し付けられた。変わりにマルコに腰を撫でられ、体がびくりと震えた。



知ってるんだおれは。
マルコはただ支配欲とか独占欲が強いだけなんだって。ちゃんと甘やかすときは甘やかしてくれるし、優しく抱き締めて、大好きだっていっぱい言ってくれる。だけど時々こうやって、おれがちゃんと自分だけのものか確認したくなるんだよね。それもマルコの愛情だって、ちゃんと知ってる。だから、これくらいの痛み、どうってことない。不安で心が痛いマルコの方が辛いもんね。



大丈夫。
ちゃんと知ってるから。



『マルコ・・・大好きだ』









愛情の塊



(どれもこれも全部ひっくるめて、愛情の塊なんだよ)






fin





20110823


マルコになら何をされても構いません、まりあです←
実はちょっとMっけあります


まりあのブログで、*について軽く説明をしています!よかったら読んでみて下さい(´ω`*






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