小説(短編) | ナノ
コンキスタドール(マルコ/ 男受主)





ちょっと用があってドレスコードで近くの島に上陸していたおれは、船に戻った夜、マルコの部屋に呼ばれた。一週間に渡っての潜入捜査だったため、慣れない場所での生活にずいぶん疲れてしまった。久しぶりにマルコにも会いたいが、はっきり言って今日はもう休みたい。
先に親父への報告を済ませ、カッチリしたスーツにネクタイのまま、マルコの部屋に向かう。着慣れないスーツは窮屈で、ずいぶんと肩が凝る。おれは右肩に手を添えると、可動域の限り、右腕をぐるぐると回した。



気がつくともうそこはマルコの部屋の前で、ぼーっと歩いていてもちゃんとマルコの元にたどり着けるんだなあ、と自分に感心した。くすんだ木の扉を三回ノックすると、おれは扉を開けた。



『ただいま』



部屋に入ると、そこにはランプの灯りで本を読むマルコの姿が。わざわざ起きて待っててくれたんだなあ、と思うと、やっぱりここに来てよかったと思える。パタン、と本を閉じて机に置いたマルコは、眼鏡を閉じた本の上に置いてから、やっとこちらを見た。
立ち上がってこちらに歩いて来たマルコにネクタイを引かれ、一気に距離が縮まる。



「もっと早いかと思ったよい」



確かに、予定では4日くらいで帰ってくるつもりだったのだが、少し気になることがあり、予定を変更して潜入捜査を続けていた。連絡もせずに予定より3日も長く島にいたことに怒った様子のマルコは、ネクタイを引っ張って、おれをベッドまで誘導した。内心、勘弁してくれよ、と思いながら、それでもどこか期待している自分がいた。



軽く足を払われ、素直にベッドに横になる。おれの上にのしかかったマルコはネクタイを強く引きながら、噛みつくようなキスを寄越した。疲れていてあんまり上手に応えることができず、鼻から抜けるような声が漏れる。長いキスにいい加減息が苦しくなり、弱々しくマルコの肩を押すと、やっと唇が離れた。



『どんだけ、・・・溜まってんだよ・・・』



一人でシたり、ナース呼んだりも出来ただろ?
そう言うと、少しムッとした様子のマルコは、おれのネクタイをしゅるしゅるとほどきながら、俺がお前以外の奴抱いていいのか?と問うた。おれが黙って首を横に振ると、マルコは満足そうに笑い、舌で上唇をぺろっと舐めた。実はこの仕草が好きだったりするおれは、疲れていているにも関わらず煽られて、この時にはすっかりその気になってしまっていたりする。



「そもそもファーストネームは・・・俺以外じゃ満足出来ねぇだろい」



疑問形ではなく決めつけるようなその言い方に、おれは小さく笑いながらも、そうだな、と呟いた。それからマルコはおれの右手をベッドに押し付けると、片手で器用にカッターシャツのボタンを外しながら、首筋にキツく吸い付いて赤い花を咲かせていった。チクリという痛みに全身が期待を含んで、ぞくりと栗立つのが分かり、おれは出てきそうになる声を噛み締めた。



「鳴けよ・・・ファーストネーム」



甘い声でそう囁かれれば、おれはもうマルコの言いなりだ。おれはお前の束縛からは逃れられそうもないよ。だって、おれがマルコからの甘い束縛を求めてるんだから。










コンキスタドール



(マルコはおれの“征服者”でいてよ)







fin





20110822


コンキスタドールはスペイン語で征服者って意味なんですって
世界史の教科書に載ってますよ(・ω・)





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