泣きぼくろにキスをした






外の気温が下がるとともに日が傾き始め、綺麗な赤色だった空は漆黒に包まれようとしていた。
部室で二人、俺と跡部は残って部誌を書いていた。
…っていうよりかは俺が勝手に跡部を待っとるだけなんやけども。

「…さっさと帰りやがれ、忍足」

「んー?気にすんなやー」

さっきからこのやり取りをしてもう何回目やろう。跡部が何回も言うてくるもんで、俺は適当に流していた。そんな俺に呆れながらも、跡部はスラスラと部誌にペンを滑らせていた。
綺麗な字やなぁ、綺麗な持ち方やなぁ、綺麗な指やなぁ…、と跡部を細々観察していく内に目はどんどん跡部の上の方へと移動していった。
全く無駄の無い肉付きや筋肉、スラリと細く伸びた腕と足、他の皆に比べたら白い肌にくっきりと浮かび上がっている鎖骨と喉仏が無駄にエロクて、俺は息を飲んだ。そして、

「…その泣きボクロ、生まれた時からあるん?」

「…何を言い出すんだよてめぇは」

「別にええやん。教えてくれたって、」

「…ちっ。生まれつきだ」

跡部は心底嫌そうな顔をして舌打ちをしながらも答えてくれた。

「ん、おおきに」にっこり笑いながら俺はお礼を述べた。
そしてまた跡部はペンを走らせていき、俺はそんな跡部を眺める。
何とも、不思議な空間やった。何の会話をないのに、空気が重いこともなくて、気持ちも軽くて、多分そう思っとるんは俺だけやと思うけど…。綺麗な跡部を眺めるだけで、俺はそんな気持ちになっていた。

しばらく経って、跡部がペンを机に置いて一息ついた。

「終わったん?」

「まぁな」

そう跡部は一言言うと、荷物を纏めだしてきぱきと帰る準備をこなしていった。
俺はそれをただ椅子に座ってじー…と見つめとった。跡部はずっとしかめっ面で、俺が居ることが本当に嫌なんかい、って思ってしまうぐらい態度が冷たかった。
正直これ以上やられたら侑士ちゃん泣いちゃうでーと心の中で泣いていると、跡部が扉を開けたところで体をこちらに向けた。

「何してやがんだ、あーん?」

「…は?」

おっと、あかんあかん。もう今日は声を掛けてもらえやろなぁとを覚悟していた俺は、急な出来事にとても間抜けな声が思わず出てしまった。
跡部が「鍵閉めるから早く出ろ」と言っていたら間違いなく泣いていたやろう。けど、跡部は

「…い…一緒に帰るんじゃねーのか?」

と少し素っ気なくしかも少し頬を染めながら上目遣いで言ってくるもんやから俺は尋常とは思えやんスピードで帰る用意をした。

部室を出て横に並んだ時に、目に入ってきたほんのりと赤い頬の上にあるとても可愛い泣きぼくろにキスをひとつおとした。(あまりにも可愛かったんやもん!!)
そしたら跡部は耳までみるみる内に赤くなっていって少し拗ねてしもたみたいやった。
あかん何これむっちゃ可愛いやん。




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(ほんまは口にしたかったけど口にしたら怒るんやもんなぁ〜…)











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