片想いに乾杯しよう
ユウジ先輩に、振られた。
っちゅーより告る前に叶わん恋やと気付いてしまった。
ずっと好きやった。あのオクラ好きなとこも、無駄に白くて華奢な体も、むっちゃ小さくて綺麗に整った顔も、言いたいことを素直に言えやんとこも、すぐ拗ねるとこも、
謙也さんのことを好きなとこも、
全てが愛しかった。
けど、ユウジ先輩は謙也さんを好きになってしもた。俺じゃなく、謙也さんを。
ある特定の人物を好きになったユウジ先輩は、驚くほど分かりやすかった。やって、そいつばっか目で追っとるし、そいつと喋ったあとは異様に顔を赤くしとる。それが、謙也さんやっただけのこと。
俺は一人、缶ビール片手に自分の部屋で真っ黒な空を見とった。今日は雲が空全体を覆っているせいで星が見えない、が時々雲の隙間から覗き見える月が妙に絵になっていた。
缶ビールはうちの冷蔵庫に何本もあって、一本ぐらい無くなっとってもうちの親は全く気付かん。一々缶ビールの本数なんて数えてなんかおらんやろうし。未成年だから飲んだらあかん、などと言うが大体皆隠れて飲んどるに決まっとるやん。大体、そんなもんや。俺だって時々チューハイとか飲んでたけど、ビールは苦いから嫌いってよく聞いとったし、あまり自分から飲もうとは思わんかった。これが、初めてや。
今日飲もうと思った理由は、謙也さんがこないだ言っとったから
「俺もやっと、ビールの上手さがわかるお年頃になってきた」
って。
何やそれ。
じゃあ俺があんたみたいにビールが上手いって言えるぐらいになったら、ユウジ先輩は俺んこと好きになってくれるんかっちゅー話っすわ。…んなわけあるか。たったひとつ年が違うだけやないか。なんで、なんで一年早く生まれてこんだんやろう。…まぁんなこと思っとってもしゃーないんやけど。
俺は心ん中で苦笑しながら缶ビールの蓋を開けた。開けた時の、プシュッ…って音が結構気持ちよかった。
勢いよく缶を傾け口に流し込んみ、ゴクンッとビールが喉を通る音が聞こえた。
「……にがっ、」
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お酒は二十歳になってから。