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嫌な予感はしたものの、まさかここまでのことだとは思いもしなかった。緊張と焦りで口の中はカラカラだ。


「……は?」


出来ることなら耳を塞いで逃げ出したい。
だけど犬飼が俺の逃走を防ぐように目の前に突っ立っているため、それすら出来ない。俺を逃がさないためにわざわざ目の前にやってきたのではなかろうか。


「何の、冗談だよ…っ」

「冗談ではない」

「それなら余計性質が悪い…」

冗談であれば一発殴るだけでこの件は許してやらんこともない。だけど犬飼の目を見てみれば冗談を言っているようではなく、真剣そのものの表情だった。


「大体何で俺何だよ?おかしいじゃないかっ」

「猿渡…、」

「だって俺たちは男同士じゃないか…!それなのに好きって、おかしいだろ?!」

「それでも、俺は猿渡が好きだ」

「っ、何で、こんないきなり…」

「いきなりではない」

「……え…?」


いきなりではない、だと?
そんな予兆全くなかったじゃないか…。


「どういう意味…?」

「昨日言っただろ」

「……何、を?」

「メールで。想いを伝えるって」

「…え、」



“メールで想いを伝える”?
何それ、おかしい…。

だって俺は昨日メールした相手は彼女一人だ。確かに彼女は今日俺に直接想いを伝えてくれると言ったが、それは犬飼ではない。

あの子だっ。あの子だけだっ。
そんなメールをしたのは彼女一人だけっ。



「メールなんて…、知らない」

「知らないわけがない」

「だって、俺とお前はメールしたことすらないだろ!」

「……本当に気が付いていなかったのか?」

「もう、止めろよっ。変なことを言うな!」


これ以上何も聞きたくない。こんな奴と話したくない。一刻も早くこの場を離れてしまおう。俺は目の前に居る犬飼を押し退け、教室から出ようとした。




…その時だった。



ポケットに入れている携帯が震えた。






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bkm
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