蜜空間 | ナノ

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それにしてもゲーム機が豊富だな。
ファミコンからPS2、PS3にWii。

だけど俺が家でいつも多用していたDSやPSPはないのかぁ。

ふとそこで俺は気が付いた。


「……?」

だってあからさまに変だ。
置いてあるゲームはどれも“二人”で遊べるディスクだけだったから。もちろん一人で遊ぼうと思えば遊べるようだが、どれも二人プレイを搭載している物だけがここにある。

もしかしてこれは、まずはゲームで仲を縮めろという雇い主側からの粋な計らいだろうか。


「……」

俺はチラリと神田さんの方を見た。

しかし神田さんは先程同様、寝てしまっている。
まぁ、だから俺はこうして息を潜めながら部屋を探索出来ているのだけど。


「……したいな」

二人でゲーム。


それは無理な願いだろうけれど。

というか神田さんはゲームをするのだろうか。彼の性格からすると「こんな低俗な物するかよ」と悪態の一つや二つ、平気で吐き捨てそうな気がする。



「……二人でゲームか」

最後にその楽しさを味わったのはいつだっただろうか。多分小学生低学年のときに弟としたきりだろう。
俺が1Pで。弟が2P。いつもそうだった。
そういえばいつも弟も「1Pがいい!」なんて言ってたっけ。でもその度に俺がじゃんけんで勝って、結局俺が1Pを使う。これがいつものお決まりのパターン。今思えば大人げないというか。こんなことになるなら一回くらい譲ってあげれば良かった。いやそれよりもいつもじゃんけんで最初にチョキを出していることを指摘してあげたほうが良かったのかな?

あの頃の可愛い弟を思い出して、俺はクスリと笑った。


あーあ。
何でこんなことになっちゃったんだろう。
弟が悪いのか?
…いや、違う。出来損ないの俺が全て悪い。
もっといいお兄ちゃんになりたかったなぁ。


「………」

ゾンビを倒していくゲームのパッケージの裏をボケーッと見ながら昔の思い出に浸っていたら、急に影が差し込んだ。

びっくりして後ろをすぐさま振り返れば。
先程まで寝ていた神田さんが俺の後ろに立っていた。


「……っ?!」


いきなりのことに、おもわず悲鳴を上げてしまいそうになったが、これ以上失態を犯すわけにはいかない。そう反射的に思った俺は、自分の口を手で押さえて、難を逃れることが出来た。



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