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●教師視点



性処理に使うのに性別も年齢も拘りはなかった。
愛や恋などというクソ面倒なことをする必要なく、擦り寄ってきた手頃な相手を適当に食っては、その晩限りで関係を切る。今まではそれが当たり前のことで、周りや相手にも特に非難されることなく済んでいた。

………そう。
この学校に赴任して、あいつに会うまでは……。


俺が宮田という存在を心に植えつけたのは、あいつがまだ新入生として入学してくる前だったと思う。バレーのスポーツ推薦で入学してくる奴は、春休みの間から部活動に参加していたのだ。


「(ルールくらいしか知らねえけど、俺で務まるのか…?)」

バレー部の顧問の代わりに、一日だけ、俺が他校との練習試合を監督することになった俺。。その時の俺は、表情や態度に出さずとも、折角の休日を潰されたことによくは思っていなかった。…とはいえ、これも仕事の内なのだと思いつつ、指示された通りに備え付けのパイプ椅子に座って黙って試合を観る。

『こーーい!』
『ライトー!』
『…すみません、もう一本!』
『先輩、ナイスっす!』


「…………」

男にしては少し甲高く、心地良く感じるほどに体育館中に響き渡る透き通った声。
周りの生徒と比べると体格も小さいが、それをカバーするように瞬発力や跳躍力が秀でているのが素人目で見ても一瞬で分かった。

「(…男子バレーのユニフォームは、思っていたよりも丈が短いんだな)」

中腰の体勢で構える度に、引き締まった尻と白い太腿に目が行く。

「(……太腿のホクロ、えっろ…)」

白い肌だからこそ余計に目立つ。
…あの黒子を舐めて吸い付けば、赤い痕もくっきり付くのだろうか。

……そんなことを考えていた時だった。

「…い、いて……ッ!」

ネット越しの熱い攻防の最中、そいつが突然足を庇うようにしゃがみ込んだのだ。

「おい、宮田!大丈夫か!?」
「…ッぅ、えっと、あはは……。先輩、そんな顔しないでくださいよ」
「……で、でも、お前……」
「少し挫いただけですから、大丈夫……、っ!?」

目に見えて痛みを堪えているくせに『大丈夫だ』と言い張る奴の身体を、俺は抱き上げた。

「…せ、先生……?」

「俺が保健室へ連れて行く。選手を交代して試合を続けていろ」

「分かりました」

「えっ?お、俺は……!」

「大人しくしていろ」

抱き上げた奴の抵抗を収めるために、パンッと軽く尻を叩く。
そうすれば、奴は『うひゃっ!?』となんとも色気のない声を上げた。その声を耳元で聞いた俺は、誰にも見えないように口元に笑みを浮かべたのだった。





*******


「……ほ、本当に…ごめんなさい。………俺、…俺…取り返しのつかないことを…っ」
「取り返しがつかないなんてことはないだろ」
「…………え……?」
「お前がカンニングをしたことは、他の教師も生徒も知らない。…知っているのは俺だけだ」
「………?」
「その身体を使って俺を誑かせてみろ」
「……!」

……そう。こいつのその表情だ。
今にも泣きそうなくせに、必死に堪えて我慢をする。
あの試合の途中で保健室に連れて行き、手当てをしてやった時もそうだった。

「『…妙にそそられる』」

あの日から俺は、授業中も、廊下ですれ違う時でさえも、お前のその表情が忘れられず、自分でも気が付かない内に視線で追っていた。

………だからこそ、


「……なーに。お前は“賢い子”だ。どの行動を取れば最善なのかは、もう分かっているはずだろ?」

こんなチャンスを、俺が逃がすわけがない。



END



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