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新規短編 教師(夏野)×生徒(波多野)


俺には心の底から信頼して、そして尊敬をしている人物が居る。
それは自分を産んでくれた肉親でもなく、俺の面倒を見てくれている叔父や叔母ではなく。

……それは、俺の学校で勤めている先生だ。

振り返る事、二年ほど。
もう既に俺は、先生に何度も助けられている。



*********


『(し、尻を触られている…?俺、男なのになんで……)』
『…や、やめ……っ』
『(……っ、誰か助けて……!)』
『…おい、何をしているんだ。汚らわしい手で、その子に触るな』
『………せ、先生……?』

高校入学して一ヶ月もしない内に、電車内で痴漢に触られていた時も助けてもらったし、


『波多野、親父さんのことは残念だったな…』
『………』
『俺に何か力になれることはないか?お前の力になりたいんだ』
『……べつに…』
『今まで親父さんと二人暮しだったよな?
………どうだ?よかったら、暫くは俺の家にでも……、』
『…っ、うるさいな!もう俺のことは放っておいてよっ!』

男手一つで、俺をここまで育ててくれた父親が病気で亡くなって自暴自棄になっていた時にも、ずっと見捨てずに支えてくれたし、


『………大丈夫か?』
『…しょうがないよ。だって俺は、実の子供じゃないもん……。当たり前のことだよ』
『暴力が当たり前なわけないだろ…っ』
『あはは、これくらい大丈夫だって。それに、俺としては住む場所を与えてもらっているだけでも、十分過ぎるほど二人には感謝しているよ』
『……波多野…』
『だから、先生がそんな顔しないで。折角のイケメンが台無しだよ』
『……こら、茶化してくれるな』
『えへへ。まあ、先生からの俺への愛は存分に伝わっております。いつもありがとうね』
『………ったく。本当にお前ってやつは…。そんなことを言われたら、これ以上何も言えなくなるだろうが』
『本当にありがとうございます』
『…本当はすぐにでも俺の家に連れて帰りたいところだが、今は我慢しておく。その代わり、お前が卒業した時は覚悟しておけよ。嫌だって言っても、無理やり一緒に住まわせるからな』
『ふふふ。はーい』

叔父や叔母に暴力を振るわれていた俺の家庭事情を知っていた上で、俺の希望通りに問題にはせず、ずっと陰で支えていてくれていたのも先生だ。


……そう。
俺にとっては先生は、ヒーロー以上の存在なんだ。ピンチの時だけでなく、ずっと俺のことを第一に考えて、いつでも俺に元気を与えてくれる人。本当に感謝をしてもしきれない。


「…どうにかして、今までの恩返しができないかなぁ」

俺はそんなことを考えながら、先生が居るであろう教室の扉を開いた。




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