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プニ☆コン、東堂×ももでパロ/ファン×芸能人



「柊もも」。
日本人でその名前を知らない人が少ないくらいには一応有名人。だからといって秀でた頭脳があるわけでも、端正な顔立ちをしているわけではない。至って普通な顔立ちをした人間である。それならば何故有名なのかというと、子役の頃から演技力を認められて芸能人として現在もドラマで活躍しているからだ。
しかしこの平凡な顔で主役が務まるわけもなく、演じる役はいつも脇役。根が平凡だから、平凡な役も上手いのだろう。俺は十年以上もドラマ撮影をしているが一度もNGを出した事がない。ふへへ、これはちょっとした自慢である。
若い子よりご年配の方に可愛がられている柊もも、それが俺だ。


「うあー!冷たいー!」

そんな俺は今都内の公立校の授業を終え家に帰っている途中である。
でもまさか途中で雨が降ってくるとは思わなかった。激しい夕立に打たれ、全身不愉快な程にずぶ濡れだ。着ているシャツも、ズボンも肌に張り付いて気持ちが悪い。早く家に帰ってお風呂に入りたいな。母さんにお湯をためといてと電話したいものの、今携帯電話を取り出せば雨に打たれて使い物にならなくなりそうなので止めておこうと思う。きっと母さんならば言わなくても今の俺の気持ちを汲んでくれるはずだ。…うん、多分。
それにしても凄い雨だ。雨に打たれる音が大き過ぎて、他の音は何一つ聞こえやしない。今なら日頃の鬱憤や悩みを大声で叫んでも誰の耳にも届かないだろう。バシャバシャっと水溜りに足を突っ込む事も躊躇しないでいいくらい濡れている俺は、俯きながら帰路を走った。

「っ、わ…?!」

その前方不注意の所為だろう。
何か硬い物体にぶつかり、尻餅を付いて倒れてしまった。尻は痛いは、ぶつけた顔は痛いはで、踏んだり蹴ったりだ。つくづくツイていない。

「いてて…」

痛めた顔面を、雨で濡れた手の平で押さえながら、俺は俯いていた顔を上げた。

そして俺は文字通り言葉を失った。
看板か何かにぶつかったと思っていたのだが、それは違ったようで、どうやら目の前に居る学ランを着た男の人にぶつかっていたらしい。しかもよくよく見てみると、凄く整った顔立ちをした男前。だけど目は野生動物のように鋭くて恐い。
この人はもしかしなくても…不良さんなのだろうか。
ど、どうしよう。慰謝料とか請求されちゃうのかな。

「あの、…ご、ごめんなさい」

事を成り行きは前方不注意の俺の所為。素直に謝ったものの、激しい雨の音で、恐怖で震えた俺の声はもしかしたら目の前の彼の耳にまで届かなかったかもしれない。このまま土下座でもしたら許してくれるだろうか、そんな考えが脳裏に浮かび上がった時だった。
強面の彼が俺に向かって手を差し出して来たのだ。
俺は差し出されたその手を反射的に掴み、立ち上がった。自分とは全く違う、大きくて骨ばった男らしい手。引っ張られるまま立ち上がった俺は、お礼を告げる為に口を開く。

「…柊、もも」

だがそれよりも先に、彼が言葉を発した。
どうやら俺の事を知ってくれているらしい。嬉しいけれど、これは慰謝料請求されたら逃げようがないではないか。

「お怪我ありませんか?」

「…大丈夫だ」

「本当にすみませんでした」

「問題無い。それよりお前は怪我は…、っ」

「……?」

どうしたんだろう。
何故か不自然な程、途端に彼の言葉が詰まった。


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